「今の職場がどうしても合わない」と感じているADHDの人にとって、転職は大きな決断です。衝動的に辞めず、準備を整えてから動くことが成功への近道になります。

私、ADHDなんだけど、今の仕事がどうしても合わなくて転職したいんだよね。でも転職理由をどう伝えたらいいかわからなくて…。
この記事では、ADHDの人が転職を成功させる手順・転職理由の伝え方・転職タイミングの見極め・転職エージェントの活用方法まで詳しく解説します。
ADHDが転職を考えやすい背景|特性と職場ミスマッチ
ADHDの人が転職を考える背景には、特性と職場環境のミスマッチが深く関係しています。ここでは具体的な傾向を見ていきましょう。ADHDの仕事全般の困りごとと対処法についてはADHDカテゴリのまとめ記事も参考にしてください。
ADHDの主な特性と仕事への影響
ADHD(注意欠如・多動症)は、不注意・多動性・衝動性を主な特性とする神経発達症です。厚生労働省の障害者雇用施策でも発達障害者の就労支援が重点的に取り上げられています。仕事の場面では次のような困りごとが出やすい傾向があります。
- 不注意:ケアレスミスが多い、書類の紛失、締切を忘れる
- 多動性:長時間同じ場所に座り続けるのが辛い、会議中に集中が続かない
- 衝動性:我慢の限界で急に退職してしまう、衝動的に発言してしまう
これらの特性は職場環境との相性に大きく左右されます。特性に合わない環境で働き続けると疲弊しやすく、転職を繰り返す悪循環に陥りがちです。特性を理解した上で転職の準備を進めることが重要です。
転職を繰り返しやすい理由と悪循環のパターン
ADHDの人が転職を繰り返しやすい主な理由は、「特性と職場のミスマッチ」が解消されないまま転職先を選んでしまうことです。準備なしに衝動的に退職 → 焦って次の職場を決める → また合わなくて辞める、という悪循環が起きやすくなります。
ADHDの転職タイミング|動いていい状態の見極め方
転職を考えたとき、まず確認したいのが「今、転職活動ができる状態かどうか」です。以下の3つのポイントで現状を確認してみましょう。

「もう限界!」って衝動的に辞めたくなるんだよなあ…。でもそのまま動いていいのかって迷う。

衝動的な退職は避けたほうがいいですよ。心身の状態と次の準備ができているかを確認してから動くのが大切なんです。
心身の状態を確認する
ADHDの人は、職場ストレスで心身が疲弊していても「なんとかなる」と思い込みやすく、実際には相当消耗しているケースが少なくありません。転職活動には一定のエネルギーが必要なため、うつや適応障害の症状が出ている場合は、まず医師に相談してから転職を検討してください。心身が安定している状態で動き始めるのが理想的です。
在職中に動くか・退職後に動くかの判断
転職活動は在職中に始めるのが一般的に有利とされています。在職中の転職活動は、経済的な不安が少なく、焦りから来る衝動的な内定承諾を防ぎやすいというメリットがあります。一方、ADHDの特性上、仕事と転職活動の並行が難しい場合は、退職後に転職活動に専念する選択肢もあります。
| タイミング | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 在職中 | 経済的安定・焦りが少ない | 時間・体力の管理が必要 |
| 退職後 | 転職活動に集中できる | 空白期間の説明・経済的不安 |
転職理由の整理|自己分析から始める
転職活動を始める前に、「なぜ今の職場が合わないのか」を特性の観点から言語化しておくことが重要です。「上司が嫌い」「仕事が辛い」という感情ベースの言語化ではなく、「マルチタスクが多い環境でパフォーマンスが落ちる」「静かな集中環境がない」などの特性ベースで整理することで、次の職場選びの精度が上がります。
ADHDの転職理由の伝え方|面接で押さえるポイント
転職回数が多い場合や、ADHD特性による離職を経験している場合でも、面接での伝え方次第でポジティブな印象を与えることができます。以下のポイントを押さえておきましょう。
転職理由を前向きに伝える構成
転職理由を伝える際は「結論 → 背景 → 改善策・次の展望」の構成が効果的です。会社や上司への批判は避け、自分の特性や目標との一致・不一致という視点で話すことが大切です。
「前職では、業務の優先順位が頻繁に変わるマルチタスク環境に難しさを感じていました。自分の特性として、集中して一つの作業を深める仕事スタイルに強みがあることを自己分析で気づき、そうした環境で力を発揮できる職場に移りたいと考えました」
転職回数が多い場合の説明の工夫
転職回数が多い場合でも、採用担当者が聞きたいのは「また短期離職しないか」という点です。各転職から何を学んだか、今回どう活かすかを具体的に話せれば、回数よりも前向きさが伝わります。各転職の経験を「特性を理解するプロセス」として位置づけて説明するのが効果的です。
ADHDの開示(オープン・クローズ)の判断
ADHDを転職先に開示するかどうかは、大きな判断のひとつです。
| 雇用形態 | 特徴 |
|---|---|
| オープン就労(開示) | 配慮を得やすい。障害者雇用枠の場合は開示前提。選択肢はやや限られる |
| クローズ就労(非開示) | 一般雇用枠で幅広く応募できる。配慮は求めにくいが、選択肢が広い |
開示・非開示どちらを選ぶかは、自分の特性の重さ・必要な配慮の程度・応募先の雰囲気などを総合的に判断することが重要です。どちらが正解ということはなく、転職エージェントや支援機関に相談しながら決めるのも一つの方法です。
ADHDの転職で合理的配慮を求める方法
障害者雇用促進法では、事業主に対して発達障害のある労働者への合理的配慮の提供が義務付けられています。厚生労働省「雇用の分野における障害者への差別禁止・合理的配慮の提供義務」に詳細が記載されています。

合理的配慮って、どんなことをお願いできるの?わがままじゃないか不安なんだけど。

法律に定められた権利ですよ。「業務指示は文字で」「静かな席の配慮」など、合理的な範囲で伝えてみてくださいね。
ADHDに求めやすい配慮の具体例
合理的配慮は「業務遂行上の困難を軽減するための調整」です。ADHDの人が求めやすい配慮の例として以下が挙げられます。
- 業務指示を口頭だけでなく文字(チャット・メモ)でも伝えてもらう
- 締切のリマインドを事前にもらう仕組みを設ける
- 集中しやすい静かな座席や個室の確保
- フレックスタイムや在宅ワークの活用
- 複数業務の同時進行を減らし、タスクの優先順位を明確にしてもらう
配慮の伝え方は「お願い」ではなく「業務パフォーマンスを上げるための調整の提案」として伝えると受け入れられやすくなります。「自分はこういう場面で困る → こんな方法があれば解決できる」という形で具体的に話しましょう。
転職活動の前に配慮事項を整理しておく
転職先の面接や入社前の交渉で必要な配慮を伝えるためには、事前に自分が何を求めるかを整理しておくことが大切です。医師や支援機関に「意見書」「就労支援計画」を作成してもらうと、職場への説明がしやすくなります。JEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)では、就労に関する相談や職場定着支援も行っています。
ADHDの転職に役立つ転職エージェントの活用法
転職エージェントを活用することで、ADHDの特性に合った求人紹介・面接対策・配慮交渉のサポートを受けられます。ここでは活用のポイントを解説します。
転職エージェント利用のメリット
ADHDの人が転職エージェントを使うと、主に次のようなメリットがあります。
- 特性に合った求人を提案してもらえる(自分で大量の求人を見る負担が減る)
- 面接日程の調整をエージェントが代行してくれる
- 転職理由の伝え方・職務経歴書の書き方をアドバイスしてもらえる
- 入社後の配慮交渉を代行してもらえるケースもある
ADHDの特性として、一人で多くの情報を整理しながら転職活動を進めることが難しい場合があるので、エージェントのサポートを積極的に活用することをおすすめします。
障害者専門エージェントと一般エージェントの使い分け
転職エージェントには、障害者専門と一般向けの2種類があります。
| 種類 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 障害者専門 | 発達障害への理解が深い・配慮交渉が得意 | 開示して転職したい人・特性への理解を重視する人 |
| 一般向け | 求人数が多い・非開示での転職に対応 | クローズ就労を希望する人・特定業界に強みがある人 |
どちらか一方に絞らず、2〜3社のエージェントに並行登録して比較検討する方法が効果的です。それぞれの担当者との相性も重要なため、カウンセリングで話しやすさを確認してみてください。
ADHDの転職活動を成功させる5つのステップ
ADHDの転職活動は、次の5つのステップで進めると成功しやすくなります。
STEP1:自分の特性と得意・苦手を整理する
転職活動の出発点は自己理解です。「どんな仕事・環境でパフォーマンスが上がったか」「どんな状況で困ったか」を過去の経験から具体的にリストアップしましょう。「得意なこと・不得意なこと・必要な配慮」の3軸で整理すると次の職場選びに直結します。
STEP2:理想の職場環境の条件を言語化する
STEP1の整理をもとに、「次の職場に求める条件」を具体的にリストアップします。「マルチタスクが少ない」「リモートワーク可」「指示が明確」など、特性ベースの職場条件を優先順位付きで言語化しておくと、求人を選ぶ際のブレを防げます。
STEP3:転職エージェント・支援機関に相談する
一人で転職活動を進めようとすると、情報収集・書類準備・日程調整・面接対策など多くのタスクが積み重なり、ADHDの特性上消化しきれないことがあります。転職エージェントや地域の障害者就業・生活支援センターを早めに活用し、負担を分散させましょう。
ADHDの人が転職に活用できる公的支援についてはこちらの記事も参考にしてください。
STEP4:求人の職場環境を事前にリサーチする
転職先を選ぶ際は、給与・業務内容だけでなくADHDの特性に関わる職場環境の要素も確認することが重要です。面接でチェックすべき具体的なポイントを以下に挙げます。
- 業務の指示・報告はどのような方法で行われるか(口頭のみか文字も使うか)
- マルチタスクが多い業務スタイルかどうか
- 残業や急な業務変更が頻繁に発生するかどうか
- 在宅ワークやフレックスタイムの導入状況
- 障害のある社員の在籍実績・サポート体制
STEP5:内定後に配慮事項を確認・交渉する
内定後(または入社前面談のタイミング)は、配慮事項を具体的に伝える好機です。入社してから「実は困っていることがある」と伝えるよりも、入社前に合意しておくほうがスムーズです。「○○という場面で困るため、△△の方法で対応してほしい」という形で具体的かつ建設的に伝えると受け入れられやすくなります。
ADHDの転職後に職場定着するためのポイント
転職して終わりではなく、新しい職場で長く働き続けるための準備も重要です。ここでは転職後の定着を助けるポイントを解説します。
入社後の自己管理と困りごとの早期相談
新しい環境に慣れるまでは、誰でも想定外の困りごとが出てきます。ADHDの人は「もう少し我慢できる」と思いながら問題を抱え込みやすい傾向があるため、小さな困りごとは早めに上司や人事担当者に相談する習慣をつけることが大切です。問題が大きくなる前に手を打てます。
定着支援・就労移行支援の活用
就労移行支援事業所では、転職後の職場定着支援も行っているところがあります。転職前から就労移行支援を利用しておくと、入社後も継続的にサポートを受けることができます。
就労移行支援の選び方と活用方法についてはこちらも参考にしてください。
ADHDで「仕事ができない」と感じている場合の対処法については以下の記事もご覧ください。
ADHDの仕事上の困りごとと働き方の工夫についてはこちらの記事も参考になります。
ADHDの転職に関するよくある質問
ADHDの転職に関して寄せられることが多い疑問をまとめました。
- ADHDを転職先に告げる義務はありますか?
- 義務はありません。障害者雇用枠で応募する場合は開示が前提ですが、一般雇用枠では開示するかどうかは自分で選べます。開示することで合理的配慮を受けやすくなる一方、非開示で幅広く応募できるメリットもあります。
- ADHDで転職回数が多いと採用されにくいですか?
- 転職回数より「なぜ転職したか・何を学んだか」の説明が重要です。特性の理解が深まったことで今回の転職軸が明確になったと伝えられれば、採用担当者に安心感を与えることができます。
- ADHDの転職はどの支援機関に相談すればいいですか?
- ハローワーク(発達障害者専門支援員)、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所などがあります。JEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)のサイトで近くの支援機関を調べられます。
- ADHDの転職は在職中と退職後どちらがよいですか?
- 一般的には在職中に転職活動を始めるほうが、経済的安定と焦りを防げるためおすすめです。ただしADHDの特性で並行が難しい場合は、退職後に専念する選択肢もあります。自分の状況に合わせて判断してください。
- ADHDでも転職エージェントは使えますか?
- もちろん利用できます。特に障害者専門の転職エージェントはADHDへの理解が深く、求人紹介から面接対策・配慮交渉の代行まで幅広くサポートしてもらえます。一般エージェントとの並行利用も効果的です。
まとめ
ADHDの転職を成功させるには、衝動的に動かず「特性の整理 → 職場条件の言語化 → 転職エージェント・支援機関の活用」という手順を踏むことが大切です。転職理由は特性ベースで前向きに伝えることで採用担当者の安心感につながります。また、合理的配慮を具体的に伝えることで転職後の定着率も上がります。転職回数が多くても、今回の軸が明確であれば次の転職は成功に近づきます。

転職活動で不安が大きい場合は、支援機関に相談しながら進めてみてくださいね。心身の不調が気になる場合は医療機関への受診も忘れずに。
ワナワーク編集部
ワナワーク編集部は、国家資格キャリアコンサルタント(キャリア相談歴8年)を有する就職・転職支援の専門家チームです。発達障害・精神疾患のある方の「働く」に寄り添い、厚生労働省などの公的機関や医療の一次情報をもとに、信頼できる情報をお届けしています。
本記事は就職・キャリア支援の観点から作成されたものであり、医療的助言ではありません。診断・治療・服薬等については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。記事内で紹介する職種・働き方は一般的な傾向に基づくものであり、個人差があります。

