気づくとADHDの部屋だけ散らかってしまう、と悩んでいませんか?それは意志の弱さではなく、脳の特性と部屋の作り方が合っていないことが大きく関係しています。

私、ADHDなんだけど、片付けても1週間で部屋が元通りなんだよなあ…。そもそも散らからない部屋って作れるのかな?
この記事では、ADHDの部屋が散らかる理由、部屋の状態が心身に与える影響、散らからない部屋づくりの仕組みまでを当事者目線で解説します。
ADHDの部屋が散らかりやすい理由
ここでは、ADHDの部屋がなぜ散らかりやすいのかを、脳の特性と部屋という環境の相性という視点から整理します。原因がわかると、後半の部屋づくりの工夫が腑に落ちやすくなります。

私がだらしないだけだと思ってたけど、理由があるなら知りたいなあ。

ADHDの特性と部屋の構造が噛み合っていないだけのことが多いんですよ。仕組みを変えれば状況は変わりやすいんです。
出した物を戻す動作が負担になりやすい
ADHDの部屋が散らかる大きな要因のひとつが、「物を元の場所に戻す」という一手間です。引き出しを開けて、しまって、閉める。この数秒の動作の途中で別のことに気を取られ、出しっぱなしになりやすい傾向があります。
戻す動作が複雑な部屋ほど、物が出しっぱなしになり散らかりやすくなります。これは性格ではなく、動作の手数と特性の相性の問題です。後半では、この手数を減らす収納の作り方を紹介します。
床や机に「とりあえず置き」が増えやすい
ADHDの特性として、目の前のことに注意が向きやすく、後回しの判断が苦手な面があります。そのため「これは後でしまおう」と思った物が、床や机に「とりあえず置き」される量が増えやすくなります。
こころの情報サイト(NCNP)でも、ADHDの不注意の特性として整理整頓が苦手なことや忘れ物の多さが挙げられています(参照:こころの情報サイト「発達障害(神経発達症)」)。とりあえず置きが部屋全体に広がると、散らかりが固定化しやすくなります。
物が増えすぎて部屋の容量を超えやすい
興味を引かれた物をその場で買ってしまう衝動性も、ADHDの部屋が散らかる一因です。同じような物が複数あったり、使わない物が部屋にあふれたりして、収納できる容量を物の量が上回りやすくなります。
容量を超えた物は、収納に入りきらず床や棚の上にあふれます。部屋に置ける量を超えた時点で、どれだけ片付けても散らかる状態に戻りやすくなるのです。物の総量を管理する視点が、散らからない部屋づくりの土台になります。
片付けの手順を組み立てるのが苦手
片付けは「どこから手をつけ、何をどこに置くか」を順序立てて考える作業です。ADHDでは、こうした段取りを担う実行機能が働きにくいことがあり、散らかった部屋を前にどう動けばよいか分からなくなることがあります。
そのため、片付けを「自分の段取り力に頼る作業」にしてしまうと続きにくくなります。なぜ片付けられないのかをさらに詳しく知りたい人は、以下の記事も参考になります。
ADHDの部屋の状態が心身・仕事に与える影響
ここでは、ADHDの部屋が散らかった状態が続くと、心や体、そして仕事にどう影響しやすいかを解説します。部屋を整える意味を理解すると、取り組むモチベーションにつながります。
探し物が増えて時間と集中力を奪われる
散らかった部屋では、鍵・書類・財布などがどこにあるか分からなくなり、探し物に多くの時間を取られます。出かける直前に探し物が始まると、遅刻や忘れ物にもつながりやすくなります。
また、視界に物が多いと脳がそれぞれに反応し、目の前の作業に集中しづらくなります。部屋の散らかりは、時間と集中力という見えにくいコストを毎日少しずつ奪います。
自己嫌悪やストレスが積み重なりやすい
「また片付けられなかった」という思いが続くと、自分を責める気持ちが積み重なりやすくなります。散らかった部屋を見るたびにストレスを感じ、気分の落ち込みにつながることもあります。
在宅ワークでは仕事の効率にも影響する
部屋がそのまま仕事場になる在宅ワークでは、部屋の散らかりが仕事の効率に直結します。デスク周りに書類や私物が混在すると、必要な物を探す手間が増え、仕事と休憩の切り替えも難しくなります。
逆に言えば、作業スペースだけでも整えておくと、集中しやすい環境を作りやすくなります。部屋全体を一度に整えようとせず、まず仕事に使うエリアから手をつけるのも一つの方法です。
ADHDが片付く部屋を作る基本の考え方
ここでは、ADHDの部屋を整えるうえで土台になる考え方を解説します。やみくもに片付ける前に、この前提を押さえておくと、散らかりにくい部屋を無理なく作りやすくなります。

大事なのは「頑張って片付ける」より「散らからない部屋にしておく」発想なんですよ。意志ではなく仕組みで支えるんです。
「片付ける」より「散らからない仕組み」を作る
片付けを「毎回の作業」として頑張ろうとすると、ADHDでは続きにくくなります。そこで発想を変え、そもそも散らかりにくい部屋の構造を一度作ってしまうことを目指します。
たとえば、戻す動作が1アクションで済む収納にしておけば、片付けという意識すらいらなくなります。意志の力に頼らず、部屋の仕組みで散らかりを防ぐのが基本の考え方です。
部屋に置く物の総量を減らす
物の量が多いほど、管理する手数も増えます。ADHDの部屋では、収納テクニックを増やすより先に、部屋に置く物そのものを減らすほうが効果的なことが多いです。
「捨てる」と考えると決断の負担が大きくなるので、まずは「使っていない物を部屋の外に出す」くらいの感覚で十分です。物が減ると、戻す場所も探す対象も減り、部屋が散らかりにくくなります。
完璧を目指さず「7割キープ」を基準にする
「完璧に片付いた部屋」を目標にすると、少し散らかっただけで挫折感を覚え、一気に元に戻りやすくなります。ADHDの部屋づくりでは、完璧ではなく「だいたい片付いている状態をキープする」を目標にします。
7割くらい整っていればよい、と基準をゆるめると、続けやすくなります。完璧な1日より、ほどほどが続く部屋のほうが結果的にきれいを保てます。
ADHDが散らからない部屋を作る収納・レイアウトのコツ
ここでは、散らからない部屋を作る具体的な収納とレイアウトのコツを紹介します。いずれも「戻す手数を減らす」「迷わない」がキーワードです。できそうなものから一つずつ取り入れてみてください。

収納グッズを買っても結局使いこなせないんだよね…。どんな部屋にすればいいのかな?
フタなし・1アクションで戻せる収納にする
戻す動作が複雑だと、ADHDの部屋では物が出しっぱなしになりやすくなります。そこで、フタを開ける・引き出すといった手数をなくし、「放り込むだけ」で片付く収納を選ぶのがコツです。
フタなしのカゴやオープン棚、フックなどが向いています。よく使う物ほど、戻す動作を減らすことを優先しましょう。1アクションで戻せると、片付けのハードルが大きく下がります。
物の「定位置」を決めてラベルで見える化する
「どこに戻すか」を毎回考えなくて済むよう、物ごとに定位置を決めます。さらに収納にラベルや写真を貼ると、戻す場所が一目で分かり、家族と共有するときにも役立ちます。
中身が見える透明ケースやオープンな収納にすると、「しまったら忘れる」を防ぎやすくなります。見える化は、忘れ物が多いADHDの特性と相性がよい工夫です。
使う場所のすぐそばに収納を置く
使う場所と収納場所が離れていると、戻すまでの数歩の間に注意がそれ、出しっぱなしになりやすくなります。そこで、物を使う場所のすぐそばに収納を配置するレイアウトが有効です。
玄関に鍵のトレー、デスク横に文房具のカゴ、といった具合に動線に合わせて配置します。「戻す距離」を短くするほど、部屋は散らかりにくくなります。
「一時置きボックス」で判断を後回しにできる場所を作る
「どこにしまうか迷う物」を床に置いてしまうのを防ぐため、判断を保留できる「一時置きボックス」を1つ用意します。迷った物はとりあえずそこに入れ、あとでまとめて仕分けます。
床に物が広がるのを防ぎ、散らかりを1か所にまとめられます。ただしボックスがあふれる前に定期的に見直すことが、ため込みを防ぐポイントです。
床に物を置かないレイアウトを意識する
床に物を置き始めると、そこを起点に散らかりが広がりやすくなります。床はあえて「物を置かない場所」と決め、すべての物に棚やカゴなどの居場所を用意するレイアウトを意識します。
床がすっきりしていると、掃除機もかけやすく、見た目の散らかりも減ります。片付けのコツや仕組み化をさらに具体的に知りたい人は、以下の記事も参考になります。
ADHDの部屋づくりに役立つアイテム・環境の選び方
ここでは、ADHDの部屋を整えやすくするアイテムや環境の選び方を紹介します。高価な収納家具をそろえる必要はなく、特性に合う物を選ぶ視点が大切です。
中身が見える透明・オープンな収納を選ぶ
収納を選ぶときは、中身が見える透明ケースやオープンラックがおすすめです。何がどこにあるか一目で分かり、しまった物を忘れにくくなります。扉や引き出しが多い収納は、開閉の手数が増えるため向きにくい傾向があります。
カゴやトレイを使えば、細かく分類しすぎずに「ざっくり放り込む」収納も作れます。分類が細かすぎると戻すときに迷うため、ADHDの部屋では大ざっぱな分類のほうが続きやすいです。
視覚的な刺激を減らす配置にする
ADHDでは、視界に入る物の多さが注意のそれやすさにつながることがあります。よく使う物以外は扉付きの収納にしまったり、視界の正面に物を置かないようにしたりすると、落ち着いて過ごしやすい部屋になります。
「見えるほうが忘れない物」と「見えると気が散る物」を分けて配置するのがコツです。集中したい作業スペースの正面は、できるだけすっきりさせておくとよいでしょう。
家族やサービスの力を借りる選択肢も持つ
仕組みを作る最初の段階や、物がたまりすぎて手がつけられないときは、一人で抱え込まずに力を借りる選択肢もあります。家族と一緒に定位置を決めたり、片付けのサービスを使ったりするのも有効です。
「人に頼る」のは甘えではなく、続けやすい仕組みを作るための手段です。仕組みさえできれば、その後の維持はぐっと楽になります。
ADHDの部屋の片付けに困ったときの相談先
ここでは、部屋の片付けや日常の困りごとが大きいときに相談できる窓口を紹介します。一人で抱え込まず、公的な支援を活用することも選択肢のひとつです。
発達障害者支援センターに相談する
各都道府県・指定都市には発達障害者支援センターが設置され、生活や仕事の困りごとを相談できます。部屋の片付けだけでなく、日常生活の工夫を一緒に考えてもらえる窓口です。
発達障害全般の情報は、発達障害情報・支援センターでも確認できます。診断の有無にかかわらず相談できるケースもあるため、まずは問い合わせてみるとよいでしょう。
就労や生活の困りごとは就労移行支援も活用できる
部屋の散らかりが仕事や生活全体の困りごとにつながっている場合は、就労移行支援などの福祉サービスで、生活リズムや段取りのスキルを身につける選択肢もあります。働くことを見据えた支援を受けられます。
ADHDの就職や働き方について全体像を知りたい人は、ADHDの仕事に関する記事をまとめたカテゴリも参考にしてみてください。具体的な相談の進め方は、以下の記事でも解説しています。
医療機関での相談を検討する
日常生活に支障が大きい場合や、気分の落ち込みが続く場合は、医療機関への相談も検討できます。専門家とともに特性を整理することで、自分に合った対処法が見つかりやすくなることがあります。
本記事の工夫はあくまで生活の参考であり、診断や治療に代わるものではありません。困りごとが大きいときは、抱え込まずに専門の窓口に相談してみてくださいね。
ADHDの部屋に関するよくある質問
ここでは、ADHDの部屋についてよく寄せられる質問にお答えします。気になる項目から確認してみてください。
- ADHDだと部屋が散らかるのは仕方ないのですか?
- 特性が影響しますが、戻す手数を減らす仕組みを作れば散らかりにくい部屋にしていくことは十分可能です。
- 部屋の片付けはどこから始めればよいですか?
- まず床に物を置かないことと、よく使う物の定位置を1つ決めることから始めると取り組みやすいです。
- 片付けてもすぐ元に戻ってしまいます
- 片付ける作業より、戻す動作が1アクションで済む収納に変えるなど、散らからない仕組みづくりを優先するとよいでしょう。
- 収納グッズはたくさん買ったほうがよいですか?
- 買い足す前に物を減らすほうが効果的です。フタなしのカゴなど、戻す手数が少ない物を最小限そろえるのがおすすめです。
- 自分だけで片付けられないときはどうすればよいですか?
- 家族や片付けサービス、発達障害者支援センターなどに相談する方法があります。仕組みづくりだけ手伝ってもらうのも有効です。
まとめ
ADHDの部屋が散らかるのは、戻す動作の負担や物の多さ、段取りの苦手さなど、特性と部屋の構造の相性が関係しています。散らかった部屋は、探し物の時間や集中力、気分にも影響します。だからこそ、頑張って片付けるより「散らからない仕組み」を部屋に作ることが大切です。物の総量を減らし、1アクションで戻せる収納や定位置の見える化を取り入れ、完璧ではなく7割キープを目指しましょう。困ったときは支援機関や医療機関に相談する選択肢もあります。

まずは床に物を置かないことから始めてみてくださいね。困りごとが大きいときは、医療機関や支援窓口に相談してみてください。
ワナワーク編集部
ワナワーク編集部は、国家資格キャリアコンサルタント(キャリア相談歴8年)を有する就職・転職支援の専門家チームです。発達障害・精神疾患のある方の「働く」に寄り添い、厚生労働省などの公的機関や医療の一次情報をもとに、信頼できる情報をお届けしています。
本記事は就職・キャリア支援の観点から作成されたものであり、医療的助言ではありません。診断・治療・服薬等については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。記事内で紹介する職種・働き方は一般的な傾向に基づくものであり、個人差があります。

