「片付けなきゃと思っているのに、どうしても部屋が片付けられない」——発達障害のある方にとって、片付けは特性と深く関わる日常の困りごとです。

友達のハルくん、発達障害があってさ。部屋の片付けが全然できなくて悩んでるんだよね。どうにかならないのかなあ。
この記事では、発達障害(ADHD・ASD)が片付けを難しくする理由、障害別のコツ、維持できる仕組み、相談先をわかりやすく解説します。
発達障害と「部屋が片付けられない」の関係
「片付けられないのは意志が弱いからだ」と自分を責めてしまう人は少なくありません。しかし発達障害のある方にとって、片付けが難しい背景には脳の特性が関係しています。
発達障害とは|片付けに関わる主な特性
発達障害は、生まれつきの脳の発達の違いにより、日常生活に困難が生じる状態を指します。国立障害者リハビリテーションセンター「各障害の定義」によると、代表的なものにADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)があります。
片付けという行為は「何を残すか判断する」「物を分類する」「決まった場所に戻す」「その状態を維持する」という複数の工程を含んでいます。発達障害の特性はこれらのどこかに影響を与えるため、部屋が片付けられない状態につながりやすいのです。努力不足や性格の問題ではありません。
ADHDが片付けられない理由|実行機能とワーキングメモリ
ADHDの主な特性は不注意・多動性・衝動性です。片付けとの関係で特に影響が大きいのは、「実行機能の弱さ」と「ワーキングメモリの少なさ」の2点です。
実行機能とは、物事に優先順位をつけ、計画を立て、順序どおりに実行する脳の働きです。ADHDではこの機能が弱いため、「どこから手をつければいいかわからない」という思考停止が起きやすくなります。また、ワーキングメモリ(脳内の作業メモ)が小さいため、「あれをしまいながらこれも片付ける」という同時進行が非常に難しいのです。
さらに、過集中(ハイパーフォーカス)によって片付け以外のことに没頭してしまったり、衝動的な買い物で物が増え続けたりすることも、部屋が片付かない原因となります。
ASDが片付けられない理由|こだわりと感覚過敏
ASD(自閉スペクトラム症)では、こだわりの強さが片付けを難しくします。物への執着が強く「捨てる・手放す」という判断が非常に苦手なため、物が増え続けることがあります。
また、感覚過敏もハードルになります。ほこりの匂い、物を動かす音、素材の感触が不快で、片付け作業そのものを避けてしまうことがあるのです。さらに「曖昧な基準での分類が苦手」という特性から、「これはどこに置けばいいのか」と判断できずに手が止まってしまうケースも多く見られます。
ASDとADHDが重複して診断される方(併存)も多く、両方の困難を抱えていることも珍しくありません。
発達障害で部屋が片付けられない|障害別の原因まとめ
ここでは、ADHDとASDそれぞれの片付けを難しくする原因を整理します。自分またはご家族の特性と照らし合わせながら読んでみてください。

ハルくん、ADHDとASD両方あるって言ってたけど、原因が一つじゃないのかあ。それだとさらに大変だよね。

そうなんですよ。だからこそ「どの特性が自分の片付けを難しくしているか」を知ることが、対策の第一歩になりますよ。
ADHDで部屋が片付けられない5つの原因
ADHDの方が片付けを苦手とする主な原因を5つ整理しました。
- 実行機能の弱さ(優先順位・計画立案・手順の実行が困難)
- ワーキングメモリの少なさ(どこに何をしまうか忘れてしまう)
- 注意の転導(片付け中に別のことが気になり中断する)
- 過集中(片付け以外のことに没頭してしまう)
- 衝動的な購入(物が増え続けてしまう)
これらの特性は意志の力で簡単に変えることができるものではありません。「どうして片付けられないのか」の原因を特性として理解することが、適切な対策への第一歩です。
ASDで部屋が片付けられない5つの原因
ASDの方が片付けを苦手とする主な原因は、ADHD とは異なる特性が中心です。
- こだわりの強さ(物を捨てられない・手放せない)
- 感覚過敏(ほこりの匂い・物を動かす音・触感が不快)
- 曖昧な判断の苦手さ(物の置き場を決められない)
- ルーティン依存(散らかった状態がルーティン化してしまう)
- 複数タスクの同時処理が困難(分類→整理→収納の並行作業が苦手)
ASDの感覚過敏については、発達障害ナビポータル(厚生労働省・文部科学省)でも発達障害の多様な特性の一つとして紹介されています。「片付けが嫌いな性格」ではなく、感覚的な負担が原因であることを周囲も理解することが大切です。
部屋が片付けられない発達障害のコツ【ADHD・ASD別】
ここでは、原因ごとの具体的な片付けのコツを紹介します。ADHDとASDで適した方法が異なるため、自分の特性に合ったものを取り入れてみてください。
ADHDに向いた片付けのコツ5選
ADHDの片付けのコツは、「完璧を目指さない」「仕組みで補う」ことが基本です。
「全部片付けよう」と思うと始められません。タイマーを15〜20分セットして、その時間だけ片付けることに集中する方法がおすすめです。時間が来たら終了してOK。終わったことに小さな達成感を積み重ねていくことが長続きのコツです。
引き出しや扉のある収納は「目の前にないこと」と認識されやすく、ワーキングメモリの弱さにより「何をどこにしまったか」がわからなくなりがちです。透明ケースやオープン棚など、中身が見える収納に変えると、自然に物の場所を把握できます。ラベリングも有効です。
物が増え続けることを防ぐためには、「1日1個手放す」という小さなルールが効果的です。衝動的な購入を減らすために「48時間ルール(欲しいと思っても2日後に再確認する)」も試してみてください。小さな習慣の積み重ねが物の量を減らす近道です。
物を使う場所の近くに収納場所を作ることで、「戻す」動作の負荷を最小化できます。例えばカバンを玄関に置くフックを設置する、スマートフォンの充電場所を固定するなど、「使う場所=しまう場所」に近づけると片付けのハードルが下がります。
「片付けなきゃ」と思っていても忘れてしまう特性があります。スマートフォンのリマインダーやタイマーを使い、「毎晩10時に5分だけ片付け」のように定期的な片付け時間を仕組みとして設定することで、忘れずに実行しやすくなります。
ADHDの片付けのコツについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考になります。
ASDに向いた片付けのコツ5選
ASDの方の場合、「判断基準を明確にする」「感覚的な負担を減らす」ことが片付けのポイントです。
ASDの方は曖昧な判断が苦手です。「1年以上使っていないものは処分する」「同じものが2個以上あれば1個は手放す」など、数値や条件で基準をルール化すると判断しやすくなります。感情的な迷いを数値のルールで置き換えるイメージです。
ASDの方はルーティンに強みがあります。「本は本棚」「文房具は引き出し左上」のようにカテゴリ別の収納場所を一度決めたら変えないルールにすることで、ルーティンの力を活かせます。収納場所を変えることは混乱を生みやすいため、一度決めたら安定させることが大切です。
ほこりや臭い・音への過敏がある方は、作業前に換気し、マスクや手袋を活用することで感覚的な負担を減らせます。片付け作業中に不快な感覚が続くと中断してしまいやすいため、「なるべく快適に作業できる環境を先に整える」ことが継続のコツです。
「捨てる」という判断をしなくてもよい「特別箱」を設けることで、物への執着に折り合いをつけやすくなります。特別箱に入る物は大切に保管する、箱がいっぱいになったら中身を見直すというルールを設けると、少しずつ物の量をコントロールできます。
複数タスクの同時進行が苦手なASDの方は、「今日は机の上だけ」「今週は本棚だけ」のように範囲を絞って片付けることが向いています。「1エリア=1日」のような分割ルールで進めると、思考停止なく着実に片付けが進みます。
部屋が片付けられない状態を維持する仕組み作り
片付けた状態を維持するためには、「意志力に頼らない仕組み」が重要です。ここでは、発達障害のある方でも続けやすい3つのアプローチを紹介します。

ハルくんが言ってたけど、一回きれいにしてもすぐ散らかっちゃうのが悩みらしくてさ。維持するコツがあるのかな?

維持は片付けより難しいですよね。でも「物の量を増やさない仕組み」と「定期的なリセット習慣」を作れば続きやすくなりますよ。
「物を増やさない」ルールで散らかりを予防する
片付いた部屋を維持する最大のポイントは「物を増やさないこと」です。「1つ買ったら1つ手放す」という”1in1out”ルールを設けると、物の総量が増えるのを防げます。ADHDの衝動買いを抑えるためには、欲しいと思ったものを即購入せずウィッシュリストに記録し、48時間後に再確認する習慣も効果的です。
「週に10分のリセット習慣」でキープする
一度片付けた部屋も、時間が経つにつれ自然と散らかっていきます。週に1回、決まった時間に10分間だけ部屋をリセットする習慣を作ることで、散らかりが小さいうちに対処できます。スマートフォンのカレンダーやリマインダーに「週次リセット」を設定しておくと、ADHDの特性にも対応しやすい仕組みになります。
「ながら片付け」を日常に組み込む
「専用の片付け時間を設ける」のが難しい場合は、日常のルーティンに片付けを組み込む方法が有効です。「歯を磨きながら洗面台を整える」「テレビのCM中に手元のものを1つ元の場所に戻す」のように、既存のルーティンにセットで紐づけることで、新しい習慣を作るより定着しやすくなります。
片付けられない発達障害の相談先と支援制度
自分だけで対策することが難しい場合や、日常生活に大きな支障が出ている場合は、専門家や支援機関に相談することを検討しましょう。
医療機関(心療内科・精神科)への相談
発達障害の診断を受けていない方が、片付けに深刻な困難を感じている場合は、心療内科または精神科への相談が選択肢の一つです。診断がつくことで、特性に合った対処法や、必要に応じた薬物療法(ADHDの場合)などを検討できるようになります。
「部屋が片付けられない」だけでなく、仕事・人間関係・日常生活に広く支障が出ている場合は、医療機関での相談を視野に入れてください。発達障害の診断や治療の詳細については、必ず医療の専門家にご相談ください。
発達障害者支援センターへの相談
各都道府県に設置されている発達障害者支援センターでは、発達障害のある方本人やご家族の相談を無料で受け付けています。診断の有無にかかわらず相談できるため、「まず話を聞いてほしい」という段階から気軽に利用できます。
発達障害に関する相談窓口については、国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害を理解する」のページから各地域の支援センター情報にアクセスできます。
就労移行支援や障害者雇用との関係
発達障害の診断を受けた場合、就労移行支援事業所やハローワーク専門援助窓口といった就労支援も活用できます。片付けや生活管理の困難は、職場でも類似のパターンで表れることが多く、就労支援の場でセルフマネジメントのスキルを身につけることができる場合があります。
発達障害のある方の就労支援については、以下の記事も参考にしてください。
ADHDの部屋の片付けに関する詳細記事
ADHDに特化した片付けの詳細な解説は、以下の記事をあわせてご覧ください。
また、発達障害全般の就労・支援に関する情報は発達障害カテゴリのトップページでまとめて確認できます。
部屋が片付けられない発達障害に関するよくある質問
ここでは、発達障害と片付けに関してよく寄せられる質問に答えます。
- 部屋が片付けられないのは発達障害のサインですか?
- 片付けが極めて難しいことが「発達障害のサイン」の一つである可能性はありますが、片付けが苦手なすべての人に発達障害があるわけではありません。仕事・人間関係・日常生活の複数の場面に困難が及んでいる場合は、専門機関に相談してみることが一つの選択肢です。診断は医療機関が行います。
- ADHDとASDで片付けの対処法は違いますか?
- 違いがあります。ADHDは「見える収納」「タイマー活用」「小目標設定」が効果的な傾向があります。ASDは「明確な判断基準のルール化」「収納場所を固定して変えない」「感覚過敏への配慮」が有効な傾向があります。両方の特性を持つ方は、自分が困っている原因に合わせて使い分けてみてください。
- 発達障害のない人に比べて、部屋が片付かないのは当然ですか?
- 発達障害の特性がある場合、片付けに困難を感じやすいことは確かです。しかし「部屋が片付かないのが当然」と諦める必要はありません。特性に合った環境づくりや仕組み作りで、片付けやすい状態を作れることがあります。専門家のサポートを借りることも有効な選択肢です。
- 家族が片付けを手伝う際に注意することはありますか?
- 本人の同意なく物を捨てることは避けましょう。ASDの方は特定の物への強いこだわりがある場合があり、無断で処分すると大きな混乱を招くことがあります。「どこから始めたいか」「残したい物は何か」を本人が決められるようサポートするスタンスが大切です。
- 発達障害の片付けの困難は治りますか?
- 発達障害の特性そのものが「治る」わけではありませんが、特性に合った環境・仕組み・スキルを身につけることで、日常生活の困難を軽減できる場合があります。医療機関での診断や支援機関のサポートを受けることで、より適切な対策を見つけやすくなります。
まとめ
発達障害(ADHD・ASD)のある方が部屋を片付けられない背景には、実行機能の弱さ・ワーキングメモリの少なさ・こだわりの強さ・感覚過敏など、脳の特性が深く関わっています。「意志が弱いから」ではなく、特性に合った仕組みや環境を整えることが、片付けのカギです。
ADHDには「タイマー活用」「見える収納」「リマインダー設定」が、ASDには「明確な判断基準」「固定された収納場所」「感覚への配慮」が効果的な傾向があります。維持のためには「1in1outルール」「週次リセット」「ながら片付け」の習慣を取り入れてみましょう。
困難が日常生活全体に及んでいる場合は、発達障害者支援センターや医療機関への相談も選択肢の一つです。本記事はワナワーク編集部(キャリア相談歴8年・国家資格キャリアコンサルタント保有)が執筆・監修しています。

小さな一歩から始めてみてくださいね。困難が続くようなら、専門家や支援機関に相談することも大切な選択肢ですよ。
ワナワーク編集部
ワナワーク編集部は、国家資格キャリアコンサルタント(キャリア相談歴8年)を有する就職・転職支援の専門家チームです。発達障害・精神疾患のある方の「働く」に寄り添い、厚生労働省などの公的機関や医療の一次情報をもとに、信頼できる情報をお届けしています。
本記事は就職・キャリア支援の観点から作成されたものであり、医療的助言ではありません。診断・治療・服薬等については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。記事内で紹介する職種・働き方は一般的な傾向に基づくものであり、個人差があります。

