「ADHDだから事務作業がどうしても苦手」と感じていませんか?苦手な理由を知り、工夫を取り入れれば、負担を減らして働ける可能性は十分あります。

私、ADHDなんだけど、書類のチェックも入力もミスばかりで事務がほんと苦手なんだよなあ…。やっぱり向いてないのかな?
この記事では、ADHDで事務が苦手になる理由、職場でできる対処法、苦手でも働きやすい仕事の選び方までを当事者目線で解説します。
ADHDで事務が苦手と感じやすい理由
ここでは、ADHDの人が事務作業を苦手と感じやすい理由を、特性の面から解説します。理由がわかれば、自分に合った対処法も見えてきます。

そもそも、なんで事務ってこんなに苦手に感じるんだろう?自分の努力が足りないだけなのかな…。

努力不足ではないんですよ。事務にはADHDの特性とぶつかりやすい要素が多いんです。まずはそこを一緒に見ていきましょうね。
不注意による入力ミスや見落としが起きやすい
事務作業は、数字の入力や書類のチェックなど、細かい正確さが求められる場面が多くあります。ADHDの不注意特性があると、こうした作業で注意がそれやすく、入力ミスや記入漏れが起きやすくなります。
発達障害情報のポータルサイトでも、ADHDの成人は発達障害情報のポータルサイト「注意欠如多動症」で「仕事のミスが多い」傾向が示されています。ミスの多さは性格ではなく特性によるものと理解することが、対策の第一歩です。
マルチタスクが多く優先順位をつけにくい
事務職は、電話対応をしながら書類を作り、来客にも応じるなど、複数の業務を同時に進める場面が少なくありません。ADHDの人はマルチタスクが苦手な傾向があり、何から手をつけるか迷ううちに、重要なタスクを後回しにしてしまうことがあります。
こうした複数業務の同時進行は、ADHDの特性ともっともぶつかりやすいポイントです。マルチタスクが苦手な理由と対策については、以下の記事でも詳しく解説しています。
単調な作業が続くと集中が切れやすい
データ入力やファイリングなど、同じ作業が長く続くと、ADHDの人は集中を保ちにくくなる傾向があります。刺激の少ない作業では脳が退屈を感じやすく、つい別のことを考えてしまうためです。
一方で、興味のある作業には強く集中できる場合もあります。「飽きやすさ」と「過集中」は表裏一体で、どちらもADHDの特性として理解しておくと対策を立てやすくなります。
スケジュール管理や締切が負担になりやすい
事務では複数の締切を同時に抱えることが多く、提出物の期限や定例業務のタイミングを管理する力が求められます。ADHDの人は時間の見積もりや段取りが苦手なことがあり、締切が重なると負担を感じやすくなります。
これは時間感覚の特性が関わっていると考えられています。時間管理の工夫を知っておくと、事務の締切の負担を減らしやすくなります。
ADHDで事務が苦手なときの職場でできる対処法
ここでは、ADHDで事務が苦手な人が、職場で実践できる対処法を紹介します。意志の力ではなく、仕組みで自分を支える発想がポイントです。

「頑張って気をつける」だけだと続きにくいんですよ。ミスが起きにくい仕組みを先に作っておくのがコツなんです。
チェックリストで確認の抜け漏れを防ぐ
記憶だけに頼ると、確認の抜け漏れが起きやすくなります。作業の手順をチェックリストにして、終わるたびにチェックを入れると、見落としを減らしやすくなります。
特に、提出前のダブルチェック項目を紙やアプリにしておくと安心です。「覚えておく」のではなく「見て確認する」仕組みに変えるのがポイントです。記憶に頼らない仕組みは、不注意による見落としを大きく減らしてくれます。
タスクを分解して一つずつ進める
マルチタスクが苦手な場合は、業務を細かく分解して一つずつ片づける方法が有効です。大きな仕事も「どうやる」「いつやる」に分けると、目の前の作業に集中しやすくなります。
同時に複数を進めようとせず、一度に一つの作業に集中するシングルタスク化を意識しましょう。次のような分解の視点を持つと、着手のハードルが下がります。
- 作業を5分から30分で終わる単位に分ける
- 各作業に「いつやるか」の目安を仮置きする
- 人に頼める部分は早めに相談する
アラームやリマインダーで時間を区切る
集中が続きにくいときは、時間を区切る工夫が役立ちます。25分作業して5分休むポモドーロ・テクニックのように、短い時間で区切ると集中を保ちやすくなります。
締切や提出物は、スマートフォンやパソコンのリマインダーに登録しておくと忘れにくくなります。通知に頼ることは、決して甘えではありません。使える道具は積極的に活用しましょう。
机やデータを整理して気が散る要素を減らす
視界に物が多いと注意がそれやすくなります。机の上は今使う物だけにし、書類は「いる」「いらない」「わからない」の3つに分けて整理すると、迷う時間を減らせます。
パソコン内のファイルも、フォルダのルールを決めておくと探す手間が減ります。整理が苦手な場合は、片付けの仕組み化の考え方も参考になります。
職場に合理的配慮を相談する
自分だけで抱え込まず、職場に配慮を相談することも大切な選択肢です。指示を口頭ではなくメールで受ける、ダブルチェックの担当を分けるなど、できる範囲の調整を伝えてみましょう。
事務が苦手なADHDの人に向いてる仕事の選び方
ここでは、事務が苦手なADHDの人が仕事を選ぶときの視点を解説します。対策をしても合わないと感じる場合は、職種を見直す選択肢もあります。

工夫しても事務がしんどいときは、思いきって別の仕事に変えてもいいのかな?なんだか逃げみたいで迷っちゃうなあ。

逃げではありませんよ。苦手を避けて得意を活かせる場所を選ぶのは、立派な戦略です。選び方の軸を一緒に整理しましょうね。
興味を持って取り組める分野を選ぶ
ADHDの人は、興味のある分野では高い集中力を発揮しやすい傾向があります。事務のように刺激の少ない作業より、自分が関心を持てるテーマや成果が見える仕事のほうが力を出しやすい場合があります。
「苦手を直す」より「得意を活かす」視点で選ぶと、働きやすさにつながります。
変化があり同じ作業が続きすぎない仕事を選ぶ
単調な作業で集中が切れやすい場合は、動きや変化のある仕事が合いやすいことがあります。体を動かす仕事や、日によって内容が変わる仕事は、飽きにくく集中を保ちやすい傾向があります。
具体的な職種や年収を知りたい人は、特性別に適職をまとめた以下の記事も参考になります。
マルチタスクの少ない働き方を選ぶ
一つの作業にじっくり取り組める仕事は、ADHDの人にとって負担が少ないことがあります。専門性を深めていく仕事や、担当範囲が明確な仕事は、優先順位の判断に追われにくくなります。
事務以外も含めて「向いてる仕事が見つからない」と感じている場合は、探し方の視点を変えるとヒントが得られます。
事務でも合う部分があれば工夫して続ける
事務すべてが苦手とは限りません。データ集計が得意、書類作成は好きなど、合う部分もあるはずです。苦手な工程だけ対策し、得意な部分を活かす形なら、事務を続ける選択肢も十分あります。
無理に職種を変える前に、まずは「事務のどの工程が苦手なのか」を具体的に切り分けることが、自分に合う働き方を見つける近道です。
ADHDで事務が苦手な人が活用できる支援制度
ここでは、ADHDで事務が苦手な人が、仕事の悩みを相談できる支援制度を紹介します。一人で抱え込まず、専門の窓口を頼ることも大切な選択肢です。
ハローワークの専門援助窓口
ハローワークには、障害のある人を対象とした専門援助部門があります。事務が苦手という悩みも含め、特性に合った仕事探しや、応募時の配慮について相談できます。診断がなくても相談できる場合があります。
就労移行支援事業所
就労移行支援事業所では、働くために必要なスキルを身につける訓練や、自分の特性に合った職場を探すサポートを受けられます。事務作業の練習を通して、苦手の対処法を実践的に学べる場合もあります。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害のある人やその家族の相談に応じる公的な窓口です。仕事の悩みだけでなく、生活全般の困りごとも相談できます。ADHDの特性については、こころの情報サイト「発達障害(神経発達症)」でも解説されています。
ADHDの就職活動の進め方や相談先について、より詳しく知りたい人は以下の記事も参考になります。
ADHDと事務の苦手に関するよくある質問
ここでは、ADHDで事務が苦手な人からよく寄せられる質問にお答えします。気になる疑問の解消に役立ててください。
- ADHDは事務職にまったく向いていないのですか?
- 一概に向いていないとは言えません。苦手な工程に対策を取り入れ、得意な部分を活かせば、事務を続けている方もいます。
- 事務のミスが多くて落ち込みます。どうすればいいですか?
- ミスは特性によるものと理解し、チェックリストやダブルチェックの仕組みを作ると減らしやすくなります。自分を責めすぎないことも大切です。
- 事務のパートやアルバイトなら続けやすいですか?
- 勤務時間や業務範囲が限られる分、負担を抑えやすい場合があります。ただし合う合わないは業務内容によるため、苦手な工程を確認することが大切です。
- 事務が苦手なことを職場に伝えるべきですか?
- 配慮を得たい場合は、苦手な作業と希望する工夫を具体的に伝えると相談しやすくなります。伝え方に迷うときは支援機関に相談する方法もあります。
- 診断を受けていなくても支援は受けられますか?
- ハローワークや発達障害者支援センターでは、診断前でも相談できる場合があります。まずは身近な窓口に問い合わせてみてください。
まとめ
ADHDで事務が苦手になりやすいのは、不注意によるミス、マルチタスクの多さ、単調作業での集中の切れやすさ、スケジュール管理の難しさといった特性が関わっているためです。これらは努力不足ではなく、特性によるものと理解することが対策の出発点になります。チェックリストやタスクの分解、リマインダーの活用、職場への配慮の相談など、仕組みで自分を支える工夫を取り入れれば、負担を減らせる可能性は十分あります。工夫しても合わないと感じる場合は、興味や得意を活かせる仕事へ目を向ける選択肢もあります。

まずは苦手な工程を一つだけ仕組みで支えてみてくださいね。つらさが続くときは、医療機関や支援機関に相談するのも大切ですよ。
ADHDの仕事の悩みや働き方の全体像を知りたい人は、ADHDの仕事についてまとめたカテゴリページもあわせてご覧ください。
ワナワーク編集部
ワナワーク編集部は、国家資格キャリアコンサルタント(キャリア相談歴8年)を有する就職・転職支援の専門家チームです。発達障害・精神疾患のある方の「働く」に寄り添い、厚生労働省などの公的機関や医療の一次情報をもとに、信頼できる情報をお届けしています。
本記事は就職・キャリア支援の観点から作成されたものであり、医療的助言ではありません。診断・治療・服薬等については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。記事内で紹介する職種・働き方は一般的な傾向に基づくものであり、個人差があります。

