「ADHDだから要領が悪い」と落ち込んでいませんか?段取りや優先順位づけが苦手なのは、脳の特性によるものかもしれません。

私、ADHDなんだけど、何から手をつけるか迷ってるうちに時間が過ぎて「要領が悪い」って言われるんだよなあ…。
この記事では、ADHDで要領が悪くなる理由と、段取り・優先順位づけを要領よくこなす具体的な工夫を当事者目線で解説します。
ADHDで要領が悪いと言われるのはなぜか
ここでは、ADHDの人が「要領が悪い」と言われる背景にある脳の特性を解説します。やる気や性格の問題ではなく、特性を理解することが工夫の第一歩になります。

そもそも、なんで私だけこんなに段取りが下手なんだろう?努力が足りないのかなあ…。

努力不足ではないんですよ。段取りには脳の「実行機能」が関わっていて、ここが苦手だと要領が悪く見えやすいんです。
段取りを支える実行機能が働きにくいため
段取りとは、作業を順序立てて計画し、実行していく一連の働きです。これを支えるのが脳の「実行機能」と呼ばれる力です。
ADHDの人は実行機能が働きにくく、順序立てて行動することが苦手な傾向があります。そのため、何から始めればよいか整理がつかず、結果として要領が悪く見えやすいのです。
発達障害情報のポータルサイトでも、ADHDの特性として「順序立てて行動することが苦手」と説明されています(発達障害情報のポータルサイト「注意欠如多動症」)。特性として理解することが、対策を考える出発点になります。
複数の作業の優先順位づけが難しいため
要領が悪いと言われる場面で多いのが、優先順位づけのつまずきです。複数の作業を前にすると、どれが重要でどれを先に片づけるべきか判断しにくくなります。
これは、頭の中で複数の情報を一時的に保ちながら比べる力(ワーキングメモリ)が関わっています。緊急度と重要度を同時に天秤にかけることが負担になりやすいのです。
その結果、目の前の作業や興味のある作業に飛びつき、本当に急ぐ仕事が後回しになることがあります。順位づけが追いつかないだけで、能力が低いわけではありません。
同時並行(マルチタスク)で混乱しやすいため
いくつもの作業を同時に進める場面でも、要領が悪く見えやすくなります。電話を受けながらメモを取り、その後で別の作業に戻るような場面です。
ADHDの人は作業を切り替えるたびに集中をやり直す負担が大きく、何をどこまでやったかを見失いやすい傾向があります。これがミスや手戻りにつながります。
マルチタスクが苦手な仕組みや具体的な対策については、別の記事でも詳しく解説しています。
要領が悪いことで仕事に表れやすい困りごと
ここでは、ADHDで要領が悪いことが仕事のどんな場面に表れやすいかを整理します。自分のつまずきがどのパターンに近いかを知ると、対策を選びやすくなります。
作業に時間がかかり納期に遅れやすい
段取りが定まらないまま作業を始めると、途中で手戻りが発生し、想定より時間がかかります。完成までの見積もりがずれやすいのも特徴です。
その結果、ひとつの作業に時間を取られ、ほかの仕事の納期に間に合わなくなることがあります。時間の見積もりが苦手なことが、遅れの大きな原因です。
優先順位を見誤り重要な仕事が後回しになる
取りかかりやすい作業や好きな作業から手をつけてしまい、本来急ぐべき仕事が後回しになることがあります。後で慌てて対応し、ミスが増える悪循環に陥りがちです。
周囲からは「優先順位がわかっていない」と見えますが、本人は判断の基準が定まらず困っているケースが少なくありません。基準を外から与える工夫が役立ちます。
指示の抜け漏れやケアレスミスが起きやすい
複数の指示を一度に受けると、そのうちのいくつかを忘れてしまうことがあります。発達障害情報のポータルサイトでも、こうした傾向が紹介されています(発達障害情報のポータルサイト「注意欠如多動性障害(ADHD)」)。
口頭の指示は記憶に残りにくく、要点が抜け落ちやすくなります。抜け漏れを防ぐには、指示をその場で文字にして残すことが何より重要です。
要領よくこなすための仕事の段取りのコツ
ここでは、要領が悪いと感じる場面を減らすための具体的な工夫を紹介します。頭の中で処理しようとせず、外に書き出して仕組みに任せるのがポイントです。

頭の中だけで段取りしようとすると、いつもこんがらがっちゃうんだよね。どうすればいいのかな?

その通りなんですよ。やることを全部書き出して「見える化」するだけで、段取りはぐっとラクになりますよ。
やることを全部書き出して見える化する
段取りの第一歩は、抱えている作業をすべて紙やアプリに書き出すことです。頭の中だけで管理しようとせず、目に見える状態にすることが大切です。
書き出すことでワーキングメモリの負担が減り、全体像をつかみやすくなります。やるべきことを次の観点で整理すると、抜け漏れを防げます。
- 今日中に終わらせる作業
- 今週中でよい作業
- 誰かに頼んだり相談したりする作業
緊急度と重要度で優先順位を整理する
書き出した作業は、緊急度と重要度の2つの軸で分けると優先順位がつけやすくなります。頭の中で比べるのではなく、表に当てはめて判断するのがコツです。
| 分類 | 対応の目安 |
|---|---|
| 緊急かつ重要 | 最優先で今すぐ着手する |
| 重要だが急がない | 予定に組み込んで計画的に進める |
| 緊急だが重要でない | 短時間で片づけるか人に頼む |
| 急がず重要でもない | 後回し、または手放す |
判断に迷うときは一人で抱え込まず、上司に「どれから手をつけるべきか」を確認するのも有効です。基準を外から与えてもらうと迷いが減ります。
一度に一つだけ取り組むシングルタスクにする
同時並行で混乱しやすい場合は、作業を一度に一つだけに絞る「シングルタスク」が有効です。今やる作業だけを画面や机に出し、ほかは目に入らないようにします。
作業を細かく区切り、25分集中して5分休むなど時間を区切る方法も役立ちます。一つずつ確実に終わらせるほうが、結果的に要領よく進みます。
指示はその場でメモして復唱する
抜け漏れを防ぐには、指示を受けたその場で文字にして残すことが効果的です。聞いた内容をメモし、「○○を△△までに、で合っていますか」と復唱して確認します。
作業の手順書やテンプレートを用意する
繰り返し行う作業は、自分用の手順書やチェックリストを作っておくと毎回ゼロから段取りを考えずに済みます。手順を見ながら進めるだけで、抜け漏れが減ります。
メールの定型文や報告書のテンプレートも用意しておくと便利です。段取りを毎回考えなくて済むよう、仕組みに任せるのがコツです。
タスク管理の具体的なツールや手順は、別の記事でも詳しく紹介しています。
要領の悪さを減らす環境づくりと相談先
ここでは、自分の工夫だけでなく、環境を整えたり相談したりして要領の悪さを減らす方法を解説します。一人で抱え込まないことが長く働くうえで大切です。
集中しやすいように作業環境を整える
気が散りやすい環境では、段取りの工夫も活きにくくなります。机の上を片づけ、視界に入る情報を減らすだけでも作業に集中しやすくなります。
周囲の音が気になる場合はイヤホンを使う、静かな時間帯に集中作業を回すなど、自分が力を出しやすい条件を整えましょう。環境調整は要領のよさを支える土台です。
職場に合理的配慮を相談する
工夫しても改善が難しい場合は、職場に配慮を相談する方法があります。指示は文字で受けたい、優先順位を一緒に確認したい、といった具体的な要望を伝えます。
自分の特性と必要な配慮を整理して伝えると、相手も対応しやすくなります。働き方の選び方や相談の進め方は、就職についてまとめた記事も参考になります。
うまくいかない時は専門の窓口に相談する
自分や職場の工夫だけでは難しいときは、外部の専門窓口に相談する選択肢があります。発達障害者支援センターやハローワークの専門援助窓口、就労移行支援などです。
一人で抱え込まず、早めに相談することが状況を変える近道です。働く中での困りごとが続く場合は、こうした窓口を活用してみてください。
ADHDで仕事ができないと感じる原因や対処法は、関連する記事でも掘り下げています。あわせて読むと理解が深まります。
ADHDの就労について全体像を知りたい人は、ADHDの仕事や働き方についてまとめた記事一覧も参考にしてみてください。
要領が悪いADHDに関するよくある質問
ここでは、ADHDで要領が悪いことについて多く寄せられる質問にお答えします。気になる項目から確認してみてください。
- 要領が悪いのはADHDのせいですか?
- 段取りや優先順位づけの苦手さは、脳の実行機能の特性が関わることがあります。ただし要領の悪さの理由は人それぞれで、気になる場合は専門機関にご相談ください。
- 要領の悪さは工夫で改善できますか?
- やることの見える化や優先順位の整理、シングルタスク化などの工夫で、要領よく進めやすくなる場合があります。自分に合う方法から試すのがおすすめです。
- 要領が悪くて仕事が続きません。どうすればいいですか?
- 自分に合う環境や仕事を選ぶことで、無理なく続けやすくなります。職場への配慮の相談や、就労支援の窓口の活用も選択肢のひとつです。
- 優先順位がつけられない時はどうすればいいですか?
- 作業を書き出し、緊急度と重要度の2軸で分けると判断しやすくなります。迷うときは上司にどれから進めるか確認するのも有効です。
まとめ
ADHDで要領が悪いと言われる背景には、段取りを支える実行機能や、優先順位づけ・同時並行の苦手さといった脳の特性があります。やる気や性格の問題ではありません。やることを書き出して見える化する、緊急度と重要度で優先順位を整理する、一度に一つだけ取り組む、指示はその場でメモするといった工夫で、要領よく進めやすくなります。それでも難しいときは、環境調整や職場への配慮の相談、専門窓口の活用も選択肢です。

まずは書き出すことから始めてみてくださいね。困りごとが続く場合は、医療機関や支援窓口に相談するのも安心ですよ。
ワナワーク編集部
ワナワーク編集部は、国家資格キャリアコンサルタント(キャリア相談歴8年)を有する就職・転職支援の専門家チームです。発達障害・精神疾患のある方の「働く」に寄り添い、厚生労働省などの公的機関や医療の一次情報をもとに、信頼できる情報をお届けしています。
本記事は就職・キャリア支援の観点から作成されたものであり、医療的助言ではありません。診断・治療・服薬等については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。記事内で紹介する職種・働き方は一般的な傾向に基づくものであり、個人差があります。

