「同時に複数の作業を振られると頭が真っ白になる」と悩んでいませんか?ADHDの特性とマルチタスクの相性を知れば、無理なく働く工夫が見えてきます。

私、ADHDなんだけど、電話と入力を同時にやると全部ぐちゃぐちゃになるんだよなあ…。なんでこんなにマルチタスクが苦手なんだろ?
この記事では、ADHDがマルチタスクを苦手とする脳の仕組み、起きやすい困りごと、シングルタスク化の具体策を当事者目線で解説します。
ADHDがマルチタスクを苦手とする理由
ここでは、ADHDの人がマルチタスクを苦手と感じやすい背景を、脳の働きの視点から解説します。理由を知ることで、自分を責めずに対策へ進めます。

そもそも人の脳は同時処理が得意ではないんですよ。ADHDの方はその影響が出やすいだけで、能力が低いわけではないんです。
そもそも脳は同時処理ではなく高速の切り替えで動く
マルチタスクは「複数を同時に処理する」ように見えますが、実際の脳は1つの作業から別の作業へ注意を高速で切り替えているだけだと考えられています。
つまり、誰にとっても本当の意味での同時処理は難しいものです。マルチタスクの正体は「素早い注意の切り替えの連続」だといえます。
この前提を知っておくと、「自分だけができない」という思い込みを手放しやすくなります。まずは脳の仕組みを正しく理解することが第一歩です。
切り替えコストで時間とエネルギーを消耗するため
作業を切り替えるたびに、脳は前の作業の情報を片づけ、次の作業の段取りを読み込み直す必要があります。この負担は「切り替えコスト」と呼ばれます。
切り替えが多いほどコストは積み重なり、集中の立て直しに時間がかかります。結果として、見た目より作業が進まず疲れだけが残りやすくなります。
頻繁な切り替えはミスと疲労の両方を増やす要因になります。切り替えそのものを減らす工夫が、後ほど紹介する対策の軸になります。
ワーキングメモリの負担が大きくなりやすいため
ワーキングメモリとは、情報を一時的に頭の中に保ちながら作業を進める力のことです。マルチタスク中は、複数の作業の状況を同時に覚えておく必要があります。
ADHDの特性がある人は、このワーキングメモリの負担を感じやすい傾向があるとされています。情報が一度に増えると、どれを進めるか迷いやすくなります。
「さっきまで何をしていたか忘れる」という困りごとも、ここに関係します。記憶力との関係をくわしく知りたい人は、以下の記事も参考になります。
頭の中で情報が増えて整理が追いつかなくなるため
ADHDの特性には、不注意で気が散りやすい面があると公的機関でも整理されています。マルチタスク中は刺激が多く、注意が複数の方向に引っ張られます。
厚生労働省などが運営する発達障害情報・支援センター「各障害の定義」では、ADHDの不注意の特性が説明されています。
注意が分散すると、頭の中の情報整理が追いつかず混乱しやすくなります。情報量そのものを減らす環境づくりが負担軽減につながります。
ADHDのマルチタスクで起きやすい仕事の困りごと
ここでは、ADHDのマルチタスクで職場に起きやすい具体的な困りごとを紹介します。自分のつまずきがどれに当てはまるか確認してみましょう。
作業の優先順位がつけられず手が止まる
複数の作業を抱えると、どれから手をつけるべきか判断が難しくなります。すべてが同じくらい重要に見えて、結局どれも進まないことがあります。
「考えているうちに時間が過ぎる」状態は、本人の意欲とは関係なく起こります。優先順位の判断を人や仕組みに任せることで、手が止まりにくくなります。
割り込みのたびに集中が途切れて戻れない
電話やチャット、声かけなどの割り込みが入ると、進めていた作業の流れが切れてしまいます。割り込みは小さな切り替えコストの積み重ねです。
一度切れた集中を元に戻すには時間がかかります。「どこまでやったか分からなくなる」のは、注意の切り替えが苦手な特性とつながっています。
集中が続かない悩みそのものについては、以下の記事でくわしく解説しています。
やりかけの作業が増えてミスや抜け漏れが起きる
複数の作業を並行させると、どれも中途半端なまま「やりかけ」が積み上がります。やりかけが増えるほど、戻すべき作業を忘れやすくなります。
結果として、提出物の抜け漏れや確認ミスが起きやすくなります。これは注意不足ではなく、抱える作業数が処理能力を超えたサインと捉えられます。
疲労やストレスがたまり仕事が続かなくなる
切り替えの多い環境では、脳のエネルギー消費が大きくなります。気づかないうちに疲労がたまり、夕方には集中が切れてしまうこともあります。
この疲れが続くと、仕事そのものへの自信を失いやすくなります。マルチタスクの負担と仕事の継続のしづらさは、以下の記事でも整理しています。
ADHDのマルチタスクをシングルタスク化する対策
ここでは、マルチタスクをシングルタスクに置き換える具体的な工夫を紹介します。どれも今日から少しずつ試せる方法です。

シングルタスクにするって言っても、仕事って勝手にいろいろ降ってくるよね。どうやって1つに絞ればいいんだろ?

降ってくる作業を一度すべて外に書き出すのがコツですよ。頭の中で抱えないだけで、ぐっとラクになるんです。
タスクを書き出して1つずつに分解する
抱えている作業をすべて紙やメモアプリに書き出します。頭の外に出すだけで、ワーキングメモリの負担が軽くなります。
次に、大きな作業を「メール1件返信」のように小さく分解します。1つずつ着手できる大きさに割ると、迷わず手を動かせます。
優先順位を決めて取りかかる順番を固定する
書き出した作業に、締切と重要度で順番をつけます。順番を先に決めておけば、作業中に「次は何か」と悩む手間がなくなります。
迷いやすい場合は、上司や同僚に「どれを優先すべきか」を確認するのも有効です。判断を1人で抱えず、外に出すことで手が止まりにくくなります。
1つの作業に集中する時間をブロックする
「この30分はこの作業だけ」と時間を区切る方法です。短い時間を区切って取り組むことで、切り替えの回数を物理的に減らせます。
時間が来たら短い休憩を挟むと、集中を立て直しやすくなります。同時にやらず「順番にやる」を意識するだけで負担は変わります。
仕事中の集中を保つ工夫をもっと知りたい人は、以下の記事も参考になります。
割り込みを減らす環境とルールをつくる
チャットの通知をオフにする、集中したい時間は耳栓やイヤホンを使うなど、割り込みを物理的に減らす工夫が役立ちます。
「午前中は問い合わせ対応をしない」のように、自分なりのルールを決めるのも有効です。割り込みが減るほど、切り替えコストも下がります。
ツールやリマインダーで記憶を外部化する
ToDoアプリやカレンダーのリマインダー機能を使い、覚えておく作業を脳の外に預けます。設定した時間に通知が来れば、抜け漏れを防げます。
付箋やホワイトボードで「今やっている作業」を1つだけ見える場所に置くのもおすすめです。記憶を外部化するほど、シングルタスクを保ちやすくなります。
こうした日常の工夫をまとめて知りたい人は、以下の記事も参考にしてみてください。
ADHDがマルチタスクに悩むとき職場でできる工夫
ここでは、個人の工夫だけでは難しいときに、職場との関わりでできる工夫を紹介します。1人で抱え込まないことが大切です。
作業の振られ方を上司に相談する
複数の作業を一度に振られると混乱しやすいことを、上司に伝えてみましょう。「1つずつ順番に指示してほしい」と具体的にお願いするのがコツです。
指示の出し方が変わるだけで、働きやすさは大きく変わります。困りごとを相談する際は、具体的な場面を添えると伝わりやすくなります。
合理的配慮として業務の調整を求める
障害を開示して働く場合、業務の進め方について合理的配慮を求めることができます。たとえば、割り込みの少ない作業を任せてもらう調整が考えられます。
働く人のメンタルヘルスについては、厚生労働省の「こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」でも情報が公開されています。
切り替えの少ない仕事や働き方を選ぶ
そもそも切り替えの少ない仕事を選ぶことも、有効な対策の1つです。1つの作業に集中できる業務や、自分のペースで進めやすい働き方が候補になります。
仕事選びで自分に合う環境を探したい人は、ADHDの就労全般をまとめたADHDの仕事や働き方について解説した記事も参考にしてみてください。
ADHDの脳内整理を助けるセルフケアを取り入れる
睡眠を十分にとる、休憩をこまめに挟むなど、脳が回復する時間を意識的に作ることも大切です。疲れた脳は切り替えがさらに苦手になります。
頭の中が常にごちゃごちゃして整理しづらいと感じる人は、以下の記事も参考になります。
ADHDのマルチタスクに関するよくある質問
ここでは、ADHDのマルチタスクについて多く寄せられる疑問にお答えします。気になる項目から読んでみてください。
- ADHDのマルチタスクは訓練で得意になりますか?
- 得意にすることより、シングルタスク化など負担を減らす工夫のほうが現実的とされています。まず環境を整えることが役立ちます。
- マルチタスクが苦手なのはADHDだけですか?
- いいえ。脳は本来同時処理が苦手なため、誰でも切り替えコストの影響を受けます。ADHDの特性があると影響が出やすい傾向があります。
- 職場でマルチタスクを求められたらどうすればいいですか?
- 作業を書き出して優先順位を決め、上司に1つずつ指示してほしいと相談する方法があります。1人で抱え込まないことが大切です。
- マルチタスクの少ない仕事はありますか?
- 1つの作業に集中しやすい業務や、自分のペースで進めやすい働き方は候補になります。仕事選びの段階で確認することがおすすめです。
- マルチタスクでミスが多く落ち込みます。どう考えればいいですか?
- 原因は能力ではなく作業の抱えすぎにあることが多いです。同時に進める数を減らすと、ミスも気持ちの負担も軽くなりやすいです。
まとめ
ADHDがマルチタスクを苦手とするのは、脳がもともと同時処理ではなく注意の切り替えで動いており、切り替えコストやワーキングメモリの負担が大きくなりやすいためです。職場では優先順位がつけられない、割り込みで集中が切れる、やりかけが増えてミスが出るといった困りごとが起きやすくなります。対策の軸は、作業を書き出して1つずつに分解し、シングルタスクに置き換えることです。あわせて割り込みを減らす環境づくりや、上司への相談・合理的配慮の活用も役立ちます。自分を責めず、仕組みで負担を減らす視点を持つことが大切です。

まずは1つずつ片づける感覚を取り戻すことから始めてみてくださいね。つらさが続くときは、医療機関や支援機関に相談してみましょう。
ワナワーク編集部
ワナワーク編集部は、国家資格キャリアコンサルタント(キャリア相談歴8年)を有する就職・転職支援の専門家チームです。発達障害・精神疾患のある方の「働く」に寄り添い、厚生労働省などの公的機関や医療の一次情報をもとに、信頼できる情報をお届けしています。
本記事は就職・キャリア支援の観点から作成されたものであり、医療的助言ではありません。診断・治療・服薬等については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。記事内で紹介する職種・働き方は一般的な傾向に基づくものであり、個人差があります。

