「目立たないけれど、なんだか生きづらい」と感じていませんか?受動型ASDは周囲に合わせて過剰に適応してしまい、困りごとが見過ごされやすいタイプです。

友達のハルくん、ASDの受動型らしくてさ。いつも周りに合わせて無理しちゃうって言ってたなあ。どんなタイプなんだろ?
この記事では、受動型ASDの特徴、孤立型・積極奇異型との違い、仕事や対人での困りごとと対処法までをわかりやすく解説します。
受動型ASDとは|ASDの3タイプの一つ
ここでは、受動型ASDがどのようなタイプなのか、その基本的な位置づけと特徴の概要を解説します。まずは全体像をつかんでおきましょう。
受動型ASDは対人関係のタイプ分けの一つ
受動型ASDとは、ASD(自閉スペクトラム症)のうち、対人関係のあり方によって分けられたタイプの一つです。イギリスの精神科医ローナ・ウィングは、ASDの社会性のスタイルを「孤立型」「受動型」「積極奇異型」の3つに整理しました。
受動型は、自分からは関わろうとしないものの、誘われれば受け身的に応じるのが大きな特徴です。あくまで対人スタイルの分類であり、正式な診断名ではない点も押さえておきましょう。
ASD自体は神経発達症の一つ
そもそもASDは、社会的コミュニケーションの難しさと、興味やこだわりの限定された反復的な様式を特徴とする神経発達症の一つです。
発達障害情報のポータルサイトでは、「自閉症スペクトラム障害(ASD)」について、対人関係形成の困難さや、特定のものへのこだわりを特徴とすると説明されています。受動型は、その特性の現れ方の一つと考えると理解しやすいでしょう。

3つの型は、あくまで対人関係の傾向を整理したものなんですよ。同じ人でも場面や年齢で現れ方が変わることもあります。
受動型ASDの主な特徴
ここでは、受動型ASDに見られやすい主な特徴を整理します。当てはまる項目が多いほど、受動型の傾向が強いと考えられる目安になります。
自分からは関わらないが誘われれば応じる
受動型の最も大きな特徴は、自分から積極的に人と関わろうとはしないものの、相手から誘われれば素直に応じる点です。
孤立型のように関わりを避けるわけではなく、また積極奇異型のように一方的に近づくわけでもありません。受け身ではあっても、人との関係そのものを拒んでいるわけではないのがポイントです。誘いに乗るので、表面的には穏やかで協調的に見えます。
周囲に合わせて過剰に適応しやすい
受動型は、周囲の期待に応えようとして過剰に適応しやすい傾向があります。自分の意見や感情を抑え、相手に合わせることでその場をやり過ごすことが多くなります。
この「過剰適応」は一見うまく溶け込んでいるように見えますが、本人の中では我慢が積み重なっています。無理を続けると、ストレスから二次的な不調につながることがあるため注意が必要です。
自己主張が苦手で意思表示が少ない
受動型は、自分の希望や「やりたくない」という気持ちを伝えるのが苦手です。何かを尋ねられても「どちらでもいい」と答えることが多く、意思表示が少なくなりがちです。
本人に意見がないわけではなく、それを言葉にして伝えることに難しさを感じています。結果として、自分の希望が後回しになり、周囲の決定に流される場面が増えやすくなります。
困りごとが見過ごされやすい
受動型は問題行動が表に出にくいため、周囲から「手のかからない人」と見られがちです。そのぶん本人の困りごとが気づかれにくく、支援につながるのが遅れることがあります。
特に、知的な遅れや言葉の遅れが目立たない場合、社会的な難しさが見過ごされやすくなります。大人になってから「もしかして」と気づくケースが少なくないのは、こうした背景があるためです。女性に多く見られやすいとも言われています。
受動型を含む大人のASD女性の気づきにくさについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
受動型ASDと孤立型・積極奇異型との違い
ここでは、受動型ASDと他の2つのタイプとの違いを整理します。3つを比べると、受動型の位置づけがよりはっきり見えてきます。

同じASDでも、3つのタイプってけっこう違うんだね。ハルくんが受動型かどうか、どこで見分けたらいいのかな?

「人との距離の取り方」が見分けの鍵になりますよ。表で違いを整理してみましょうね。
| タイプ | 人との関わり方 | 見えやすい印象 |
|---|---|---|
| 孤立型 | 関わりを避け、一人を好む | マイペースで近寄りがたい |
| 受動型 | 自分からは関わらないが応じる | おとなしく協調的 |
| 積極奇異型 | 自分から一方的に関わる | 距離感がつかみにくい |
孤立型は人との関わりそのものを避ける
孤立型は、他者との関わりそのものを求めず、一人で過ごすことに安心感を覚えるタイプです。誘われても応じないことが多く、単独行動を好みます。
誘いに応じる受動型とは、この点が大きく異なります。孤立型は周囲との接点が少ないため、対人面の特性が比較的早い段階で気づかれやすい傾向があります。
積極奇異型は自分から一方的に関わる
積極奇異型は、自分から積極的に他者へ関わっていくタイプです。ただし、相手の反応や状況をくみ取ることが難しく、一方的に話し続けてしまうことがあります。
受け身の受動型とは正反対に見えますが、どちらも「相手との距離感をつかむ難しさ」という共通の背景を持っています。現れ方が違うだけで、根にある特性は地続きなのです。
タイプは固定されず重なることもある
3つのタイプは、はっきりと分かれているわけではありません。同じ人でも、年齢や置かれた環境によって現れ方が変わることがあります。
たとえば、子どもの頃は孤立型に近く、大人になって受動型の傾向が強まる場合もあります。「自分は受動型」と決めつけすぎず、傾向の一つとしてとらえるのがよいでしょう。ASD全体の特徴を知りたい人は、以下の総論記事も参考になります。
受動型ASDの仕事での困りごと
ここでは、受動型ASDの人が仕事の場面で感じやすい困りごとを解説します。受け身の特性が、職場でどのように影響するかを見ていきましょう。
頼まれごとを断れず仕事を抱え込む
受動型は頼みごとを断るのが苦手なため、次々と仕事を引き受けて抱え込みやすくなります。自分のキャパシティを超えても「無理です」と言い出せないことが多いのです。
その結果、業務量が偏ったり、残業が増えたりすることがあります。損な役回りを引き受けやすく、心身の負担が大きくなりやすい点には注意が必要です。
自分の意見を言えず評価が伝わりにくい
会議や打ち合わせで自分の意見を言えず、貢献が周囲に伝わりにくいことがあります。良いアイデアを持っていても発言できず、評価につながらない場面が出てきます。
また、困っていても「助けてほしい」と言い出せず、一人で抱えることもあります。受け身に見える分、主体性がないと誤解されてしまうこともあるでしょう。
過剰適応の反動で二次障害が起きやすい
受動型は、周囲に合わせて無理を重ねるうちに、強いストレスをためこみやすい傾向があります。我慢が限界に達すると、心身に不調が現れることがあります。
気分の落ち込みや不安、不眠などが続く場合は、二次的な不調が生じている可能性があります。
仕事がうまくいかないと感じる原因と対処については、以下の記事でも整理しています。
受動型ASDの対人関係での困りごと
ここでは、受動型ASDの人が日常の対人関係で感じやすい困りごとを解説します。職場以外の場面でも、受け身の特性は影響します。
流されやすく利用されてしまうことがある
受動型は相手の要求に応じやすいため、周囲に流されやすい傾向があります。「ノー」と言えないことで、不本意な役回りを引き受けてしまうことがあります。
悪意のある相手からは、都合よく利用されてしまうリスクもあります。自分の境界線を守る練習をしておくことが、身を守るうえで大切になります。
本音を言えず関係が深まりにくい
受動型は本音を打ち明けるのが苦手なため、相手と表面的な付き合いにとどまりやすいことがあります。合わせることはできても、自分から心を開くのが難しいのです。
その結果、周囲からは「何を考えているかわからない」と感じられることもあります。少しずつ自分の気持ちを言葉にしていくことが、関係づくりの第一歩になります。コミュニケーションの特性については以下の記事も参考になります。
受動型ASDの困りごとへの対処法
ここでは、受動型ASDの困りごとを和らげるための対処法を紹介します。日常で取り入れやすい工夫から、支援制度の活用まで順に見ていきましょう。

断るのが苦手なハルくんに、何かいいアドバイスってあるのかな?無理させたくないんだよね。

まずは自分の気持ちに気づくこと、そして少しずつ伝える練習がおすすめですよ。一人で抱えず相談先を持つのも大切です。
自分の気持ちや希望を言葉にして整理する
受動型の人は、まず自分が何を感じ、何を望んでいるのかを整理することが役立ちます。日々の出来事と気持ちをメモに書き出すと、自分の傾向が見えてきます。
「本当はこうしたかった」という気持ちに気づくことが、自己理解の出発点です。自分の気持ちを把握できると、伝える準備が整いやすくなります。焦らず少しずつ進めましょう。
断り方や伝え方を少しずつ練習する
「断る」「お願いする」といった伝え方は、練習で身につけやすいスキルです。いきなり完璧を目指さず、決まったフレーズを用意しておくと使いやすくなります。
- 今は手一杯なので、明日でもよいですか
- 少し考える時間をいただけますか
- 私はこちらの案がよいと思います
無理のない働きやすい環境を選ぶ
受動型の人は、役割や手順が明確な職場のほうが力を発揮しやすい傾向があります。曖昧な指示が少なく、過度な対人調整を求められない環境が向いています。
自分の特性に合う仕事を選ぶことは、無理のない働き方につながります。どんな仕事が合うかを知りたい人は、以下の記事も参考にしてみてください。
支援機関や専門家に相談する
一人で抱え込まず、支援機関や専門家に相談することも大切な対処法です。発達障害者支援センターや就労移行支援などでは、特性に応じた相談ができます。
大人の発達障害について、特性の理解や相談先は武田薬品工業「大人の発達障害ナビ・自閉スペクトラム症(ASD)とは」でも紹介されています。気になる場合は、まず身近な窓口に相談してみましょう。ASD全般の支援については、ASDの就職や働き方についてまとめた記事も参考になります。
受動型ASDに関するよくある質問
ここでは、受動型ASDについて多く寄せられる疑問にお答えします。気になる点を確認しておきましょう。
- 受動型ASDは女性に多いと聞きますが本当ですか?
- 女性は社会的な難しさが目立ちにくく、受動型として見過ごされやすい傾向があると言われています。ただし男性にも見られ、性別で決まるものではありません。
- 受動型ASDは大人になってから気づくことが多いですか?
- 問題行動が表に出にくいため、困りごとが見過ごされ、大人になってから気づくケースは少なくありません。気になる場合は専門機関への相談が選択肢になります。
- 受動型と孤立型はどう見分ければよいですか?
- 誘われたときに応じるかどうかが目安になります。応じるのが受動型、関わりそのものを避けるのが孤立型です。あくまで傾向の一つとしてとらえましょう。
- 受動型ASDの人に向いてる仕事はありますか?
- 役割や手順が明確で、過度な対人調整を求められない仕事が力を発揮しやすい傾向があります。特性に合う環境を選ぶことが、無理のない働き方につながります。
まとめ
受動型ASDは、自分からは関わらないものの誘われれば応じ、周囲に合わせて過剰に適応しやすいタイプです。孤立型は関わりを避け、積極奇異型は一方的に関わる点で異なります。受動型は問題が表に出にくいぶん、困りごとが見過ごされやすいのが特徴です。仕事では断れず抱え込んだり、意見を言えず評価が伝わりにくかったりすることがあります。自分の気持ちを言葉にして整理し、伝え方を練習しながら、無理のない環境を選ぶことが大切です。一人で抱えず、支援機関や専門家に相談することも有効な選択肢になります。

まずは小さな「これがいい」を口に出すことから始めてみてくださいね。つらさが続くときは、医療機関への相談も大切ですよ。
ワナワーク編集部
ワナワーク編集部は、国家資格キャリアコンサルタント(キャリア相談歴8年)を有する就職・転職支援の専門家チームです。発達障害・精神疾患のある方の「働く」に寄り添い、厚生労働省などの公的機関や医療の一次情報をもとに、信頼できる情報をお届けしています。
本記事は就職・キャリア支援の観点から作成されたものであり、医療的助言ではありません。診断・治療・服薬等については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。記事内で紹介する職種・働き方は一般的な傾向に基づくものであり、個人差があります。

