アスペルガーが自己中心的に見える理由と対処法

二人で穏やかに話し合う様子のアスペルガーと自己中心的に関する記事のアイキャッチ画像

「アスペルガーの人は自己中心的」と感じたことはありませんか?その多くは、悪意ではなく特性によるすれ違いから生まれる誤解です。

ワナちゃん
ワナちゃん

友達のハルくん、アスペルガーなんだけど「自己中だね」って言われて落ち込んでてさ。本当にわがままなのかなあ?

この記事では、アスペルガーが自己中心的に見える背景にある特性、本人と周囲それぞれの対処法、相談先までを中立的に解説します。

アスペルガーが自己中心的に見えるのはなぜか

ここでは、アスペルガー(ASD)の人が自己中心的に見える理由を整理します。多くは性格ではなく、生まれ持った脳の特性によるすれ違いが背景にあります。

ワークさん
ワークさん

ハルくんが自己中なわけではないんですよ。相手の視点を想像する力に特性が関わっていて、それが誤解につながりやすいんです。

相手の視点を想像することが苦手な特性

アスペルガー(ASD)の人は、相手の立場に立って物事を想像する「視点取得」が苦手な傾向があります。自分には見えていることが相手には見えていない、という前提を補いにくいのです。

これは相手を軽視しているのではなく、他者の視点を推測する処理に時間がかかったり誤差が生じやすかったりする特性です。結果として、自分の関心や都合を優先しているように見えてしまう場合があります。

共感の質が異なるという特性

「共感がない」と誤解されることもありますが、より正確には共感の現れ方が異なるという理解が近いと考えられています。相手の感情を頭で理解しても、その場で表情やしぐさに出にくいことがあります。

そのため、心配している気持ちがあっても淡々とした受け答えになり、冷たい・自分本位だと受け取られてしまう場合があります。気持ちがないわけではない点が見落とされやすいのです。

非言語や暗黙のルールを読み取りにくい特性

表情・声色・その場の空気といった非言語の情報や、言葉にされない暗黙のルールを読み取ることが苦手な傾向があります。厚生労働省のこころの耳「職域で問題となる大人の自閉症スペクトラム障害」でも、共感しにくい・会話が一方的になりやすい傾向が紹介されています。

たとえば順番に担当する役割に気づかず毎回避けているように見えたり、会話が一方通行になったりすることがあります。本人は悪気なく、ルールが見えていないだけというケースが少なくありません。

こだわりの強さが優先に見える特性

特定の手順や進め方への強いこだわりも、アスペルガー(ASD)の特性の一つです。自分のやり方を変えにくいことが、周囲には「人の意見を聞かない」「自分勝手」と映る場合があります。

こだわりは集中力や正確さといった強みの裏返しでもあります。背景にある理由を本人が言葉で伝えられると、わがままではなく特性だと理解されやすくなります。

こうした特性は、ASD(アスペルガー)の就職や働き方についてまとめた記事でも触れています。あわせて参考にしてみてください。

自己中心的という言葉が生む誤解を整理する

ここでは、アスペルガーと自己中心的という言葉をめぐる誤解を整理します。性格的な自分本位とは区別して捉えることが、本人にも周囲にも役立ちます。

ワナちゃん
ワナちゃん

でもさ、実際に困らされた人が「自己中だ」って感じるのも仕方なくない?それはダメなことなのかなあ?

ワークさん
ワークさん

困った気持ちは自然なものですよ。大切なのは、原因を性格ではなく特性として捉え直すことなんです。

自己中心的とわがままは同じではない

わがままは「相手の立場がわかった上で自分を優先する」状態を指すことが多い言葉です。一方、アスペルガーの場合は相手の立場がそもそも見えにくいために、結果的に自己中心的に映ってしまうという違いがあります。

意図して人を押しのけているのではない点が、両者の大きな違いです。同じ行動でも背景がまったく異なるため、性格の問題として責めても改善につながりにくいといえます。

自己中心的な行動は発達障害の有無に関わらず起こる

自己中心的に見える言動は、発達障害のない人にも見られるものです。自分本位な行動を、すべてアスペルガーと結びつけて考えるのは適切ではありません。

注意ポイント

自己中心的に見えるからといって、本人や周囲が自己判断でアスペルガーと決めつけないようにしましょう。診断は医療機関で行われるものです。

似た特性として誤解されやすい行動

「話が一方的」「人の話を聞かない」「自分の非を認めない」といった行動も、自己中心的という印象と結びつきやすいものです。これらも特性が背景にある場合があります。

それぞれの背景については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせて読むと、誤解が生まれる仕組みを立体的に理解しやすくなります。

話が通じない人はアスペルガー?理由と対処法を解説のアイキャッチ画像 話が通じない人はアスペルガー?理由と対処法を解説 自分の非を認めない人はアスペルガー?理由と対処法を解説のアイキャッチ画像 自分の非を認めない人はアスペルガー?理由と対処法を解説

アスペルガーが自己中心的に見える場面と本人の対処法

ここでは、自己中心的に見えやすい具体的な場面と、本人ができる対処法を紹介します。完璧を目指すのではなく、すれ違いを減らす工夫から始めるのがおすすめです。

自分の意図を言葉で説明する

こだわりや進め方には理由があることが多いものです。「なぜこの方法でやりたいのか」を言葉にして伝えると、自分勝手という誤解が減りやすくなります。

察してもらうことを前提にせず、意図を先に共有することがポイントです。相手も背景がわかれば、協力したり代案を出したりしやすくなります。

相手の要望を直接たずねる

相手の気持ちを推測するのが苦手なら、想像に頼らず直接確認する方法があります。「してほしかったことはありましたか」と聞くだけでも、すれ違いを減らせます。

会議の準備や役割分担など、暗黙のルールが関わる場面では、先回りして「次は私が担当した方がよいですか」と確認するのも有効です。

自分の特性を整理して把握する

どんな場面で誤解が起きやすいかを振り返り、自分の特性を整理しておくと対策を立てやすくなります。過去に指摘された出来事をメモにまとめておくのも一つの方法です。

背景に白黒思考などの認知のかたよりが関わる場合もあります。考え方のクセとの向き合い方は、アスペルガーの認知の歪みについて解説した記事も参考になります。

アスペルガーの認知の歪みと白黒思考の対処法を解説する記事のアイキャッチ画像 アスペルガーの認知の歪みとは|白黒思考の対処法を解説

アスペルガーが自己中心的に見えるときの周囲の接し方

ここでは、家族や同僚など周囲の人ができる接し方を紹介します。本人を責めず、特性に合わせて伝え方を変えることで、関係がぐっと楽になることがあります。

ワナちゃん
ワナちゃん

ハルくんと接するとき、私たちはどんなふうに気をつけたらいいのかな?

ワークさん
ワークさん

遠回しに察してもらおうとせず、してほしいことを具体的な言葉で伝えるのがコツですよ。お互いに楽になりますね。

してほしいことを具体的な言葉で伝える

「空気を読んでほしい」「察してほしい」という伝え方は、特性上もっとも伝わりにくいものです。何を・いつ・どうしてほしいのかを具体的な言葉で伝えることが、誤解を防ぐ何よりの近道です。

「もう少し気をつけて」ではなく「会議では一人5分以内で話してほしい」のように、行動レベルで示すと伝わりやすくなります。

行動の背景にある特性を理解する

自己中心的に見える言動の背景に特性があると知るだけでも、受け止め方は変わります。国立障害者リハビリテーションセンターの発達障害情報のポータルサイト「自閉症スペクトラム障害(ASD)」では、対人関係の形成の難しさが特性として説明されています。

「わざとではない」とわかると、過度に責めずに済みます。コミュニケーションのすれ違いについては、ASDのコミュニケーション特性を解説した記事もあわせて参考になります。

良い変化を具体的にフィードバックする

うまくいったときに「今の伝え方、わかりやすかったよ」と具体的に伝えると、本人がどう振る舞えばよいかを学びやすくなります。否定よりも、望ましい行動を示す方が定着しやすいといえます。

お互いに完璧を求めず、すれ違いを一つずつ減らしていく姿勢が、長く良い関係を保つうえで役立ちます。

工夫しても改善しないときの相談先

ここでは、本人や周囲の工夫だけでは難しいときに頼れる相談先を紹介します。一人で抱え込まず、専門の窓口を活用することが解決の糸口になります。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、本人や家族の相談に総合的に応じる地域の拠点です。診断の有無にかかわらず、対人関係の困りごとについて相談できる場合があります。

関わり方のコツや利用できる支援について、専門のスタッフから助言を受けられます。まずは住んでいる地域の窓口に問い合わせてみるとよいでしょう。

医療機関

困りごとが強く、生活や仕事に支障が出ている場合は、精神科や心療内科への相談も選択肢です。診断や特性の整理は、医療機関で専門的に行われます。

本人が受診をためらう場合は、家族だけで相談できる窓口もあります。無理に勧めず、まずは情報を集めるところから始めるのがおすすめです。

就労支援の窓口

職場での対人関係に悩んでいる場合は、就労移行支援やハローワークの専門援助窓口が役立ちます。特性に合った働き方や、職場への伝え方を一緒に整理してもらえます。

特性を活かせる仕事を探したい人は、ASDに向いてる仕事をまとめた記事も参考にしてみてください。

ASDに向いてる仕事10選|特性別の適職を解説のアイキャッチ画像 ASDに向いてる仕事10選|特性別の適職を解説

アスペルガーと自己中心的に関するよくある質問

ここでは、アスペルガーと自己中心的というテーマでよく寄せられる質問にお答えします。気になる点を解消するヒントにしてください。

アスペルガーの人は本当に自己中心的なのですか?
性格として自分本位なわけではなく、相手の視点を想像する特性が背景にあり、結果として自己中心的に見える場合が多いと考えられています。
自己中心的に見える行動は直せますか?
特性自体をなくすことは難しいですが、意図を言葉で伝える・直接確認するなどの工夫で、すれ違いを減らせる場合があります。
家族が自己中心的に見えて困っています。どう接すればよいですか?
してほしいことを具体的な言葉で伝え、行動の背景に特性があると理解することが役立ちます。難しい場合は支援窓口に相談しましょう。
自己中心的に見えると必ずアスペルガーなのですか?
いいえ。自己中心的に見える言動は発達障害のない人にも起こります。自己判断で決めつけず、気になる場合は医療機関に相談してください。

まとめ

アスペルガー(ASD)が自己中心的に見える背景には、相手の視点を想像する力や共感の現れ方、非言語の読み取り、こだわりの強さといった特性があります。これは性格的なわがままとは異なり、悪意のあるものではありません。本人は意図を言葉で伝える・相手の要望を直接確認する、周囲はしてほしいことを具体的に示すといった工夫で、すれ違いは減らせます。大切なのは、行動を性格ではなく特性として捉え直すことです。一人で抱え込まず、支援窓口や医療機関も活用してみてください。

ワークさん
ワークさん

誤解はお互いの工夫で少しずつ減らせますよ。困りごとが強いときは、無理せず専門の窓口や医療機関に相談してみてくださいね。

この記事の監修者

ワナワーク編集部

ワナワーク編集部は、国家資格キャリアコンサルタント(キャリア相談歴8年)を有する就職・転職支援の専門家チームです。発達障害・精神疾患のある方の「働く」に寄り添い、厚生労働省などの公的機関や医療の一次情報をもとに、信頼できる情報をお届けしています。

本記事の免責事項

本記事は就職・キャリア支援の観点から作成されたものであり、医療的助言ではありません。診断・治療・服薬等については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。記事内で紹介する職種・働き方は一般的な傾向に基づくものであり、個人差があります。