発達障害でコミュニケーションが取れない原因と対処法

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「何を言いたいのかわからない」「会話がかみ合わない」——発達障害のある方がコミュニケーションで壁を感じる場面は、職場でも日常でも少なくありません。

ワナちゃん
ワナちゃん

友達のユウくん、発達障害あるんだけど「会話がうまくできない」ってずっと悩んでてさ。原因とか対策って何かあるのかな?

この記事では、発達障害(ASD・ADHD・LD)ごとにコミュニケーションが難しくなる原因と、職場・日常で実践できる具体的な対処法をわかりやすく解説します。

発達障害でコミュニケーションが取れない理由

発達障害のある方がコミュニケーションを苦手に感じるのは、努力不足や性格の問題ではありません。ここでは障害種別に、コミュニケーションの困難が生じやすい主な原因を解説します。

ASD(自閉スペクトラム症)の場合

ASDのある方は、相手の表情・声のトーン・身振りなどの非言語情報を読み取ることが苦手な傾向があります。厚生労働省が公開した「発達障害の特性(代表例)」でも、ASDの特性として「相手の表情や態度などよりも、文字や図形、物の方に関心が強い」ことが挙げられています(厚生労働省「発達障害の特性(代表例)」)。

具体的には、「適当に」「少し待って」といった曖昧な表現を言葉どおりに受け取ってしまうことや、冗談や皮肉が通じにくいことが挙げられます。また、場の雰囲気を察するのが苦手なため、話題の転換タイミングや会話の終わらせ方に戸惑うことも少なくありません。こうした特性は「相手に興味がない」ということではなく、情報処理の仕方の違いによるものです。

ADHD(注意欠如・多動症)の場合

ADHDのある方がコミュニケーションで困りやすいのは、注意の持続・衝動性のコントロール・話の整理に関わる特性が影響しているためです。厚生労働省は、ADHDの特性として「次々と周囲のものに関心を持ち」「エネルギッシュにさまざまなことに取り組む」傾向を挙げており、コミュニケーション場面でも同様のことが起きやすいとされています。

たとえば、相手が話している途中に割り込んでしまったり、話題がどんどん変わってしまったりすることがあります。また、報告・連絡・相談(報連相)のタイミングを逃すことや、大切な情報を聞き逃してしまうことも起こりやすいです。本人は「ちゃんとコミュニケーションしたい」と思っていても、脳の特性上うまくいかない場面が生じるのです。

ADHDのコミュニケーション困難については、詳しくまとめた記事もあります。

ADHDのコミュニケーションが苦手な理由と対処法のアイキャッチ画像 ADHDのコミュニケーションが苦手な理由と対処法

LD(学習障害)の場合

LD(限局性学習症)のある方は、読み書きや計算の困難が特性の中心ですが、情報を受け取る・整理する・伝える過程にも影響が及ぶことがあります。たとえば、メールや文書でのやりとりが難しい場合、必要な情報をうまく伝えられないことがあります。また、口頭での指示を聞いても内容を整理しきれず、コミュニケーションが一方通行になってしまうケースもあります。

LDは「言葉そのものが理解できない」わけではなく、情報の処理や出力の形式によって得意・不得意が生じる点が特徴です。伝え方を工夫することで、コミュニケーションのしやすさが大きく変わることがあります。

発達障害のある方がコミュニケーションで感じる困りごと

ワナちゃん
ワナちゃん

ユウくん、職場で「急に怒られた」って言ってたんだよね。なんで怒られたのかもよくわからないって。どういう状況が多いのかな?

ワークさん
ワークさん

職場で多いのは「空気が読めない」と思われる場面ですね。本人に悪意はなくても、相手への伝わり方でトラブルになりやすいんですよ。

ここでは、発達障害のある方が実際に職場や日常でよく直面するコミュニケーションの困りごとを場面別に整理します。

「意図が伝わらない」「空気が読めない」と言われる

ASDのある方は、言葉の意味を字義どおりに解釈する傾向があるため、場の雰囲気や「言外の意味」を読み取ることが難しいです。たとえば「少し待ってね」という言葉を数分のことだと受け取れず、どれくらい待つべきかわからなくなることがあります。また、上司や同僚の感情の変化を表情から読み取れないため、「突然怒られた」という感覚を持つことも少なくありません。

このような場合、「空気が読めない人」と誤解されやすいですが、本人は意図的に無視しているわけではありません。コミュニケーションの「前提」とされているルールが、本人には見えにくい状態にあることを周囲が理解することも大切です。

会話の流れをつかむことが難しい

ASDのある方の中には、会話のテンポやキャッチボールのリズムがつかみにくいと感じる方がいます。自分の話す順番がわからなかったり、話題が切り替わるタイミングに乗り遅れたりすることがあります。また、自分の関心が強いテーマでは話しすぎてしまい、気づかないうちに相手を退屈させてしまうことも。

ADHDのある方の場合は逆に、相手の話の途中で思いつきを口にしてしまう衝動性や、話題が次々と変わってしまう傾向が会話の流れを崩してしまうことがあります。どちらも「悪意がある」わけではなく、特性から来る困難です。

ASDで会話が噛み合わないと感じる方向けには、より詳しい解説記事もあります。

ASDで会話が噛み合わない理由と対処法を解説するアイキャッチ画像 ASDで会話が噛み合わない理由と対処法を解説

報告・連絡・相談(報連相)がうまくできない

職場で特に問題になりやすいのが、報告・連絡・相談のタイミングや内容の伝え方の困難です。ADHDのある方は、タスクの途中でほかのことに気を取られて報告を忘れてしまうことがあります。ASDのある方は「どこまで報告が必要か」の判断が難しく、過不足のある報告になりやすいことがあります。

また、「わからないことは聞けばいい」とわかっていても、「どのタイミングで」「どう聞けばいいか」がわからず、結果として確認できないまま間違いが起きるケースもあります。これも発達障害の特性が影響する場面の一つです。

コミュニケーションが取れないときの対処法【当事者向け】

ここでは、発達障害のある方が職場や日常でコミュニケーションの困難を和らげるために実践できる対処法を紹介します。

具体的な指示やルールを「言語化」してもらう

ASDのある方に特に有効なのが、曖昧な指示をより具体的・明示的な言葉に変えてもらうことです。「少し待って」「適当に」「なるはやで」といった表現は、本人には伝わりにくいことがあります。「3時間後までに対応してください」「この書式で提出してください」のように数字や具体的な行動で示してもらうと、誤解が減ります。

自分から上司や同僚にお願いできる場合は、「具体的に教えてもらえると助かります」と一言添えるだけでも、コミュニケーションがスムーズになることがあります。合理的配慮として職場に申請できるケースもあるため、相談先の活用も選択肢のひとつです。

自分の「コミュニケーションの取扱説明書」を作る

発達障害のある方の中には、自分の得意なコミュニケーション方法・苦手な状況・配慮してほしいことをまとめた「自分のトリセツ」を作ることで、職場との関係が改善した方もいます。たとえば「口頭の指示は聞き返すことがある。メモを渡してもらえると助かります」「複数人での会議では発言が遅れることがある」などを事前に共有しておくことで、誤解を防ぎやすくなります。

トリセツは一度に完璧に作ろうとしなくても構いません。気になったことを少しずつメモして積み重ねることで、自分自身への理解も深まります。就労移行支援事業所でも作成をサポートしてもらえることがあります。

メモ・テキスト・録音など「得意な方法」で記録する

口頭のやりとりが苦手な場合は、チャット・メモ・テキスト入力など文字ベースのコミュニケーションを活用することが有効な場合があります。文字にすることで、情報を整理してから伝えられるため、頭の中がまとまらないままで発言してしまうことが減ります。

また、会議や面談の内容を録音・議事録化することを上司に相談してみるのもひとつの方法です。後から内容を確認できる環境があると、聞き逃しによるミスを防ぎやすくなります。こうした工夫は合理的配慮として認められる場合もあります。

コミュニケーションの「型」をマニュアル化する

発達障害のある方の中には、ルールや型が決まっているほどコミュニケーションが楽になるという方が多くいます。たとえば、報連相のフォーマットを「①現状 ②問題 ③相談したいこと」のように固定しておくと、何を伝えればよいかで迷わなくなります。挨拶の言葉や返事のパターンも、決まった型を覚えておくことで場面に応じた反応がしやすくなります。

こうしたマニュアル化は「ズルい」ことではなく、特性に合った合理的な工夫です。発達障害情報・支援センター(発達障害ナビポータル)でも、自分に合ったコミュニケーション方法を見つけることの大切さが発信されています(発達障害ナビポータル)。

周囲の人ができる配慮とコミュニケーションの工夫

ワナちゃん
ワナちゃん

ユウくんの職場の人も「どう接したらいいの?」って思ってるかもしれないよね。周囲はどうしたらいいの?

ワークさん
ワークさん

周囲の人も少し関わり方を変えるだけで、コミュニケーションが格段にスムーズになることがありますよ。

ここでは、発達障害のある方と一緒に働く人や家族が意識できる、コミュニケーションの工夫を紹介します。

短く・具体的・一度にひとつの指示を心がける

発達障害のある方へ指示を出す際は、「短く」「具体的に」「一度にひとつ」を意識することが大切です。厚生労働省の資料でも、ASDの方への配慮として「肯定的・具体的・視覚的な伝え方の工夫」が推奨されており、ADHDの方には「短く、はっきりとした言い方で伝える」ことが有効とされています(厚生労働省「発達障害の特性(代表例)」)。

たとえば、「あとでやっておいて」ではなく「今日の17時までにAという作業を完了してください」のように、期限・作業内容・優先順位を明確にすることが効果的です。また、複数の指示を一度に伝えるより、1ステップずつ確認しながら進める方が、確実に伝わりやすくなります。

文字や図を使って情報を共有する

口頭での指示だけでなく、メモ・チャット・メール・ホワイトボードなど文字や視覚情報で共有することも有効です。ASDのある方は視覚情報の処理が比較的得意なことが多く、書面で情報があると後から確認できる安心感につながります。

また、LDのある方の中には文字情報が苦手な方もいるため、図解・フローチャート・チェックリストなど、文字以外の視覚化手段が合う場合もあります。本人がどの形式で情報を受け取りやすいかを確認し、柔軟に対応することが大切です。

感情的な口調を避け、冷静・穏やかに伝える

発達障害のある方の中には、感情的なトーンの変化に強く反応しやすい方がいます。叱責口調や感情的な言い方は、本人がパニックになったり、何を修正すればよいかわからなくなったりする原因になることがあります。「なぜできないの」よりも「こうすると改善できますよ」のように、行動の改善点を具体的に伝える言い方が伝わりやすいです。

冷静・穏やかなトーンでの対話は、発達障害のない方にとっても良いコミュニケーションの基本です。特性のある方へのコミュニケーション配慮は、職場全体の心理的安全性を高めることにもつながります。

発達障害のコミュニケーション困難と支援制度の活用

コミュニケーションの困難が仕事に大きく影響する場合、支援制度を活用することで状況が改善することがあります。以下では代表的な相談先・支援機関を紹介します。

発達障害者支援センターへの相談

各都道府県に設置されている発達障害者支援センターでは、当事者や家族・職場の人が相談できます。コミュニケーション困難についての相談はもちろん、職場環境の調整方法や支援機関の紹介なども行っています。診断がなくても相談できるケースがあります。

センターの所在地は発達障害ナビポータル(発達障害ナビポータル)で確認できます。

就労移行支援でコミュニケーションスキルを練習する

就労移行支援事業所では、職場でのコミュニケーション(報連相・言葉の使い方・会話の流れ)を練習するプログラムが提供されています。グループワークやロールプレイを通じて、実際の職場場面を想定した対話の練習ができます。また、支援員が個別に特性に合ったコミュニケーション方法を一緒に考えてくれることも多いです。

就労移行支援は利用料が原則無料(所得に応じた上限あり)で、働きたいと思っている方なら利用できる場合があります。発達障害のある方の就職を支援する制度全般については、以下の記事で詳しく解説しています。

発達障害でも就職できる?雇用枠・支援制度の選び方ガイドのアイキャッチ画像 発達障害でも就職できる?雇用枠・支援制度の選び方ガイド

職場での合理的配慮を申請する

障害者雇用促進法により、事業主は障害のある方への合理的配慮を提供する義務(合理的配慮義務)があります。コミュニケーションに関しては、「指示をメモ書きにしてもらう」「会議の議事録を共有してもらう」「口頭ではなくチャットで指示してもらう」といった配慮を申請することができます。

合理的配慮の申請には障害者手帳がなくても相談できる場合があります。ただし障害者手帳を取得していると、障害者雇用枠での就職が可能になり、より多くのサポートを受けられる場合があります。発達障害全般の就職支援については、発達障害の就職・転職に関するまとめ記事も参考にしてみてください。

ASDのコミュニケーション特性について深く知る

発達障害の中でも、コミュニケーション困難がとりわけ目立ちやすいのはASD(自閉スペクトラム症)です。ASDのコミュニケーション特性・すれ違いのパターン・対処法については、専門の解説記事で詳しく紹介しています。

ASDのコミュニケーション特性とすれ違いを解説のアイキャッチ画像 ASDのコミュニケーション特性とすれ違いを解説

また、ASDと合わせて「空気が読めない」と言われることについてはこちらの記事も参考になります。

ADHDで空気が読めない理由と対処法を解説のアイキャッチ画像 ADHDで空気が読めない理由と対処法を解説

コミュニケーションが取れない発達障害に関するよくある質問

ここでは、発達障害とコミュニケーションに関してよく寄せられる質問に回答します。

発達障害があるとコミュニケーションは一生うまくならないのですか?
必ずしもそうではありません。支援機関のプログラムや自分に合った工夫を積み重ねることで、コミュニケーションの困難を和らげた方は多くいます。「治る」ものではありませんが、対処法を身につけることで日常が楽になることがあります。
発達障害とコミュニケーション障害は同じですか?
異なります。コミュニケーション障害はDSM-5で定義された独立した診断カテゴリです。発達障害(ASD・ADHD・LD)のある方がコミュニケーションに困難を感じることはありますが、「コミュニケーション障害」という診断名とは別です。
いわゆる「コミュ障」と発達障害の違いは何ですか?
「コミュ障」は一般的に使われる俗称であり、医学的な診断名ではありません。発達障害は脳の機能的な違いに起因する診断名であり、専門家による評価と診断が必要です。コミュニケーションに困りごとがある場合は、専門機関への相談が参考になります。
職場でコミュニケーションの配慮をお願いするにはどうすればよいですか?
まずは人事や上司に「特性があること」「どういった配慮があると助かるか」を伝えることが第一歩です。障害者手帳がなくても合理的配慮を依頼できるケースがあります。就労移行支援や発達障害者支援センターに相談すると、伝え方のサポートを受けられることもあります。
発達障害のコミュニケーション困難は家族にも理解してもらいにくいのですが?
外から見えにくい特性であるため、家族にも誤解されやすいことがあります。発達障害者支援センターや精神保健福祉センターでは家族相談も受け付けています。また、「自分のトリセツ」を作って家族に伝える方法も有効です。

まとめ

発達障害(ASD・ADHD・LD)でコミュニケーションが難しくなるのは、脳の機能的な特性によるものです。当事者の努力不足ではありません。ASDでは非言語情報の読み取りや曖昧な表現の理解が難しく、ADHDでは注意の維持や衝動性がコミュニケーションに影響します。LDでは情報の処理・伝達の形式によって困難が生じます。いずれの場合も、自分に合った工夫・周囲の配慮・支援機関の活用によって、コミュニケーションのしやすさを高めることができます。本記事はワナワーク編集部(キャリア相談歴8年・国家資格キャリアコンサルタント保有)が執筆・監修しています。

ワークさん
ワークさん

困りごとが続く場合は、ひとりで抱え込まず支援センターや専門家に相談することも大切ですよ。

この記事の監修者

ワナワーク編集部

ワナワーク編集部は、国家資格キャリアコンサルタント(キャリア相談歴8年)を有する就職・転職支援の専門家チームです。発達障害・精神疾患のある方の「働く」に寄り添い、厚生労働省などの公的機関や医療の一次情報をもとに、信頼できる情報をお届けしています。

本記事の免責事項

本記事は就職・キャリア支援の観点から作成されたものであり、医療的助言ではありません。診断・治療・服薬等については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。記事内で紹介する職種・働き方は一般的な傾向に基づくものであり、個人差があります。