「なぜいつもこんなに疲れるんだろう」と感じていませんか。発達障害のある人は、脳の特性から日常的に多くのエネルギーを消費しやすく、疲れやすい傾向があります。

友達のユイちゃん、発達障害なんだけどさ。毎日すごく疲れるって言ってて。周りより頑張ってないわけじゃないのに、なんでこんなに違うんだろうって悩んでるんだよね。
この記事では、発達障害で疲れやすい5つの理由、仕事での休み方・エネルギー管理の方法、放置するリスクまで、公的機関の情報をもとにわかりやすく解説します。
発達障害で疲れやすい5つの理由
発達障害のある人が疲れやすいのは「意志が弱い」「体力がない」からではありません。脳の特性によって、ほかの人より多くのエネルギーを消費する場面が日常に多く存在するからです。ここでは主な5つの理由を解説します。

ユイちゃんは「周りと同じことをしてるだけなのに、なんでこんなに疲れるんだろう」ってよく言ってるんだよね。そういうものなのかな?

そういうものなんですよ。脳の特性から、同じ状況でもより多くのエネルギーを使ってしまうんです。理由を知るだけでも気持ちがラクになりますよ。
①感覚過敏による慢性的な消耗
発達障害のある人の多くは、音・光・においなどの感覚刺激に敏感な「感覚過敏」があります。国立障害者リハビリテーションセンターの研究によると、自閉スペクトラム症(ASD)のある人の60〜90%が感覚の問題を経験しているとされています。
発達障害のない人であれば、騒音や蛍光灯の光などの刺激は時間とともに「慣れ」て意識から薄れていきます。ところが感覚過敏のある場合は、この「慣れ(順応)」が起こりにくく、刺激が意識に入り続けてしまうため、常にエネルギーを消費し続けている状態になります。
オフィスのエアコンの音、コピー機の稼働音、蛍光灯の光——発達障害のない人には気にならない刺激が積み重なり、仕事中ずっと疲弊し続けるのです。
詳しくは、国立障害者リハビリテーションセンター研究所の「発達障害のある人のつらい感覚の問題とそのセルフケア」も参考にしてみてください。
②周囲への適応で神経をすり減らす
ASDのある人は、社会的な状況を読み取るのが難しい特性があります。そのため「周囲の空気を読もう」「自分の言動が正しいか確認しよう」と常に頭をフル回転させている状態になります。
これを「マスキング(過剰適応)」と呼び、ありのままの自分を隠して周囲に合わせ続けることで、膨大なエネルギーを消費します。ASDだけでなくADHDのある人も、衝動的な言動をコントロールしようとして絶えず緊張状態にあることが多く、同様の疲弊が生じやすいと言われています。
「仕事が終わったら何もできない」「家に帰ると電池が切れたようになる」という状態は、この適応疲労が背景にあることが多いです。
ADHDのある人には「過集中(ハイパーフォーカス)」と呼ばれる特性があります。興味のある作業に没頭すると、食事・トイレ・水分補給も忘れるほど集中し続けてしまい、集中が終わった瞬間に突然、深い疲労感に見舞われることがあります。
ASDのある人も、こだわりの強さから特定の作業に熱中しすぎてしまうことがあります。自分では疲れているという感覚がないまま動き続け、気づいたときには限界に達しているというパターンが起きやすいのです。
過集中は「集中できる強み」でもありますが、休憩なしで長時間没頭すると、翌日以降に大きな疲労が残るため、意識的にストップをかける工夫が必要です。
④睡眠の乱れによる回復不足
発達障害のある人は睡眠障害を併発しやすいとされています。ADHDでは概日リズムの乱れや寝つきの悪さが多く、ASDでは感覚過敏によって外部の音や光で眠れないケースが少なくありません。
睡眠の質が低いと、日中の疲労回復が十分に行われず、翌日に疲れを持ち越しやすくなります。また過集中によって夜遅くまで作業を続けてしまい、睡眠時間が削られるという悪循環も起こりがちです。
「毎日十分に寝ているはずなのに疲れが取れない」と感じる場合は、睡眠の質そのものに問題がある可能性も考えられます。
⑤自分の疲れに気づきにくい
発達障害のある人の中には、感覚の処理の仕方の特性から「自分がどれくらい疲れているか」をリアルタイムで把握するのが難しい人がいます。身体の内側からの感覚(空腹・疲労・痛みなど)を認識しにくい「感覚鈍麻」が一因の場合もあります。
疲れていても「まだ大丈夫」と思い込んで動き続け、気づいたときには限界を超えてしまっている——というケースが起きやすいのです。これは怠けているのではなく、自己認識にかかわる特性の問題です。
疲れやすい状態を放置するとどうなる?
「疲れやすいのは仕方ない」と放置し続けると、発達障害の二次障害につながるリスクがあります。ここでは特に注意すべきリスクを確認しておきましょう。
うつ病や適応障害などの二次障害
慢性的な疲労と周囲への適応ストレスが積み重なると、うつ病・適応障害・不安障害などの「二次障害」を発症するリスクが高まります。二次障害が起きると発達障害の特性そのものへの対処が難しくなり、仕事や生活への影響がより大きくなるため、早めのケアが重要です。
こころの情報サイト(国立精神・神経医療研究センター)では、発達障害のある人の二次障害として気分障害や不安障害が起こりやすいことが指摘されています(参考:こころの情報サイト「発達障害(神経発達症)」)。
燃え尽き症候群(バーンアウト)
過剰適応やマスキングを長期間続けた結果、ある日突然「何もできなくなる」燃え尽き(バーンアウト)状態に陥ることがあります。特にASDのある人で報告が多い現象で、これまでできていたことが急にできなくなる、外出できなくなる、感覚過敏が強まるなどの症状が現れます。
バーンアウトからの回復には長い時間がかかることもあります。疲れのサインを早めに察知し、日常的に休息を組み込む習慣をつけることが予防につながります。
仕事での疲れやすさに対処する5つの方法
疲れやすさは「根性で乗り越える」ものではなく、特性に合った工夫で軽減できます。以下では特に仕事の場面で実践しやすい対処法を紹介します。

ユイちゃんに教えてあげたいんだけど、具体的にどんな工夫ができるんだろう?仕事中に疲れを感じたとき、どうすればいいの?

「疲れたら休む」ではなく、「最初から休憩を組み込む」考え方に切り替えるのがポイントですよ。予防的に休むイメージです。
①休憩をあらかじめスケジュールに組み込む
「疲れたから休む」という受動的な休み方ではなく、「2時間作業したら必ず10分休む」というルールをあらかじめ設定することが効果的です。タイマーやカレンダーに休憩を入れておくことで、過集中によって休憩を忘れる事態を防げます。
「15分に1回、水を飲む」「午後2時はかならず5分目を閉じる」など、シンプルで繰り返しやすいルールにするとより続けやすくなります。
②感覚刺激を減らす環境調整をする
感覚過敏による疲労に対しては、刺激そのものを減らす工夫が有効です。
- 聴覚過敏:ノイズキャンセリングイヤホン・耳栓・イヤーマフの活用
- 視覚過敏:モニターの輝度を下げる、サングラスや遮光カーテンを使う
- 触覚過敏:素材を選んで服装を工夫する、タグを切り取る
- 嗅覚過敏:席を換気口の近くや窓際にする、マスクで香りを遮断する
職場での合理的配慮として、席の場所の変更や騒音の少ない環境での業務を相談することも可能です。「自分のわがまま」と遠慮せず、特性にもとづいた配慮として相談してみてください。
「どの場面でエネルギーが消耗するか」「何をすると回復するか」を自分で把握することが、疲れを管理する第一歩です。紙に書き出してみることをおすすめします。
消耗する場面:電話対応・会議・雑談・騒がしい環境・判断を急かされる作業
回復できる場面:一人での作業・自然の中での散歩・静かな場所での休憩・好きな音楽を聴く
活用法:消耗予定(会議など)の前後に回復時間を意識的に配置する
「消耗する予定がある日は、前後に余白を作る」という視点でスケジュールを組むだけで、一日の疲れ方が変わってきます。
④疲れのサインを可視化して記録する
自分の疲れに気づきにくい特性がある場合は、感覚に頼らず「数値や記録で把握する」方法が有効です。
- 毎日の終わりに「今日の疲れ度」を1〜5点で記録する
- 頭痛・肩こり・集中力低下・イライラなどを「疲れのサイン」として事前にリスト化する
- サインが2〜3個以上あれば「休息が必要な状態」と判断するルールを作る
ゲームのHPゲージのように、自分の体力を視覚化して管理するイメージが分かりやすいと感じる人もいます。感覚的な把握が難しいからこそ、仕組みで補うことが重要です。
⑤職場に配慮を求めることも選択肢のひとつ
一人で抱え込まず、職場での合理的配慮を求めることも大切な手段です。障害者手帳の有無にかかわらず、職場への相談は可能です。
- 「こまめな小休憩を入れることで対応できます」と事前に伝える
- 過集中しやすいことを踏まえ、タイマーを使うことの了承を得る
- 騒音が苦手な場合、席の配置変更や静かな作業スペースの確保を相談する
自分の特性を正直に伝えることは「甘え」ではなく、長期的に仕事を続けるために必要な自己管理のひとつです。
発達障害の就職・職場環境について詳しくは、発達障害に関する情報をまとめた記事一覧もあわせて参考にしてみてください。
対処法を実践しながらも、より根本的な視点で疲れやすさと付き合っていくためのポイントを紹介します。
「普通にできる」の基準を疑ってみる
「みんな疲れていても頑張っているのに自分だけ……」という自己批判に陥りがちですが、発達障害のある人が消費するエネルギーの量は、発達障害のない人とは根本的に異なります。
「同じことをしているのに、なぜこんなに疲れるのか」という問いの答えは、怠けているからでも弱いからでもありません。脳の処理の仕方が異なるため、同じ行動でもエネルギー消費量が違うのです。「自分の基準」で仕事量や休息量を設定することが、長く働き続けるうえでとても重要です。
働き方を見直す・支援を活用する
現在の職場環境が特性に合っていない可能性がある場合は、転職や職種の見直しも一つの選択肢です。また、就労移行支援などの支援機関を活用することで、自分の特性に合った職場探しのサポートを受けることもできます。
「一人で工夫するだけでなく、支援を活用して環境そのものを変える」という視点も持つと、より根本的な疲れやすさの解消につながることがあります。
ここでは発達障害の疲れやすさについてよくある疑問をまとめました。
- 発達障害があると、なぜ普通の人より疲れやすいのですか?
- 脳の特性により、感覚刺激の処理・社会的な適応・衝動のコントロールなどに多くのエネルギーを使うためです。感覚過敏・過集中・過剰適応などが重なり、見た目には同じ行動をしていても消耗量が異なります。
- 疲れやすさは改善できますか?
- 特性そのものをなくすことは難しいですが、工夫次第で疲労の蓄積を減らすことはできます。環境調整・計画的な休息・支援の活用などを組み合わせることで、日常の疲れを軽減できる場合があります。
- 仕事中に疲れを感じたとき、どう対処すればよいですか?
- タイマーを使って定期的に休憩を取ること、感覚刺激を減らすグッズ(耳栓・サングラス等)を使うことが有効です。事前に自分の「エネルギー消耗パターン」を把握しておくと対策が立てやすくなります。
- 疲れやすいことを職場に相談してもよいですか?
- はい、相談は可能です。障害者手帳の有無にかかわらず、合理的配慮として席の変更や休憩時間の調整などを相談することができます。自己開示するかどうかは状況を見て判断してください。
- 疲れやすさが続くとき、どこに相談すればよいですか?
- まずはかかりつけの精神科・心療内科に相談することをおすすめします。就労の悩みがある場合は、発達障害者支援センターや就労移行支援事業所への相談も選択肢のひとつです。
まとめ
発達障害のある人が疲れやすい主な理由は、感覚過敏・周囲への適応・過集中・睡眠の乱れ・自己認識の難しさの5つです。疲れやすさを放置するとうつ病や燃え尽きなどの二次障害につながるリスクがあるため、日常的な工夫と早めのケアが大切です。休憩の仕組み化・環境調整・エネルギーマップの作成・職場への配慮相談など、自分に合った方法を組み合わせてみてください。
ワナワーク編集部
ワナワーク編集部は、国家資格キャリアコンサルタント(キャリア相談歴8年)を有する就職・転職支援の専門家チームです。発達障害・精神疾患のある方の「働く」に寄り添い、厚生労働省などの公的機関や医療の一次情報をもとに、信頼できる情報をお届けしています。
本記事は就職・キャリア支援の観点から作成されたものであり、医療的助言ではありません。診断・治療・服薬等については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。記事内で紹介する職種・働き方は一般的な傾向に基づくものであり、個人差があります。

