発達障害の偏食はわがまま?原因と大人の対処法を解説

「好き嫌いが多すぎる」「食べられるものが限られている」——発達障害のある人に偏食が多いのは、わがままや育て方の問題ではなく、脳の感覚処理の特性が深く関わっています。

ワナちゃん
ワナちゃん

友達のリオちゃんが、食べられるものが少なくて困ってるって言ってたなあ。発達障害と偏食って関係あるのかな?

この記事では、発達障害と偏食の関係・原因・大人でも実践できる対処法・専門機関への相談タイミングを、公的機関・医療の情報をもとにわかりやすく解説します。

発達障害の偏食とは|感覚特性との関係

発達障害のある人に偏食が多く見られることは、研究でも報告されています。ここでは偏食がなぜ起きるのか、その背景にある感覚特性の仕組みを解説します。

偏食は「脳の感覚処理の違い」から起きる

偏食は「わがまま」でも「育て方の失敗」でもありません。発達障害のある人の多くは、感覚過敏または感覚鈍麻(感覚の受け取り方の特性)を持っており、これが食べ物への反応に直接影響しています。

一般的に「おいしい」「普通の食感」と感じる食べ物でも、感覚過敏がある人には痛みや不快感として感じられることがあります。一口食べるだけでも、大きなストレス反応を引き起こすことがあるのです。

ASD・ADHDで偏食が多い理由

特にASD(自閉スペクトラム症)では、感覚過敏とこだわり特性の両方が偏食に影響します。ASDの人に偏食が多い背景には、①感覚過敏、②こだわり・変化への抵抗感、③過去の嫌な経験の記憶が強く残りやすいことの3つが主な要因として挙げられます。

ADHDの場合は、衝動的な食の好みの偏り(「好きなものしか食べない」)や、味覚・嗅覚の過敏から食べ物への嫌悪が生じることがあります。一般社団法人 日本小児神経学会のQ&Aでは、自閉スペクトラム症の偏食の主因として「感覚過敏、食べ物の変化への難しさ、こだわり、摂食嚥下の問題、フラッシュバック、摂食障害」の6つが挙げられています(日本小児神経学会「偏食にはどのように対応したらよいでしょうか?」)。

発達障害の偏食の主な原因を詳しく解説

偏食の背景にある原因は一つではありません。ここでは発達障害の偏食を引き起こしやすい主要な要因を解説します。

ワナちゃん
ワナちゃん

リオちゃん、野菜とか食べられる種類が少ないって言ってたけど、やっぱり感覚的に辛いのかなあ。

ワークさん
ワークさん

そうなんですよ。発達障害の偏食には感覚過敏だけでなく、こだわり特性や過去の経験も絡んでくるんです。

①感覚過敏(味覚・嗅覚・触覚・視覚)

発達障害のある人が偏食になりやすい最大の要因が感覚過敏です。感覚過敏は食べ物のあらゆる感覚面に影響します。

感覚偏食への影響の例
味覚過敏少しの苦み・辛み・酸味を強く感じ、一般的な食品でも食べられない
嗅覚過敏食べ物の匂いが強烈に感じられ、近づくことさえ難しい場合がある
触覚過敏(口腔内)ネバネバした食感・ぬるっとした感触・繊維が残る食感を強く不快と感じる
視覚的嫌悪食べ物の見た目(色・形の変化)が受け入れがたく感じる

厚生労働省の「発達障害の特性(代表例)」でも、ASDの特性として「感覚刺激への敏感さ」が挙げられており、音や肌触り・室温などと同様、食感や味覚への過敏も特性の一部であることが示されています(厚生労働省「発達障害の特性(代表例)」)。

ADHDの感覚過敏についても、聴覚・視覚・触覚と並んで味覚・嗅覚が過敏になるケースがあり、特定の食べ物が強烈な不快感をもたらすことがあります。ADHDの感覚過敏については、こちらの記事でくわしく解説しています。

ADHDの感覚過敏とは|種類別の特徴と仕事の対処法のアイキャッチ画像 ADHDの感覚過敏とは|種類別の特徴と仕事の対処法

②こだわり特性・変化への抵抗感

ASDの人に見られるこだわり特性は、食事にも現れます。「いつも同じブランドの食品でないと食べられない」「食べ物が混ざっているのが嫌」「白いものしか食べない」といった厳格なルールを持つことがあります。

新しい食べ物への強い抵抗感(新奇性恐怖)も偏食を深めます。見慣れない食べ物が食卓に出ると不安やパニックが生じることがあり、食べる前から拒否反応が出る場合もあります。これは「わがまま」ではなく、脳の変化への対応が困難という特性から生じる行動です。

③過去の嫌な経験・フラッシュバック

発達障害のある人は、記憶の感情的な側面が強く残りやすい傾向があります。一度食べて強烈な不快感を覚えた食べ物は、その後ずっと「食べられないもの」になってしまうケースがあります。

学校給食で無理やり食べさせられた経験、吐き気を催した経験、食事中に叱られた記憶などが、特定の食べ物への条件反射的な嫌悪につながることもあります。こうしたフラッシュバック由来の偏食は、単純な「好き嫌い」とは性質が異なります。

ARFIDとは|発達障害と偏食の深刻なケース

発達障害の偏食が極端になった場合、「ARFID(回避・制限性食物摂取障害)」という状態になることがあります。ここでは、ARFIDの基本と受診の目安を解説します。

ARFIDの定義と発達障害との関係

ARFID(Avoidant/Restrictive Food Intake Disorder)は、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)に掲載された摂食障害の一種です。「体重減少・重大な栄養欠乏・栄養補助の必要性・心理社会的機能障害」のいずれかが生じるほどの食の回避・制限状態を指します。

研究では、ASDのある人はARFIDを発症するリスクが一般集団の13.7倍、ADHDのある人で9.4倍という報告があります。発達障害のある人のなかで、偏食が深刻化しやすい背景がここにあります。

注意ポイント

偏食が原因で体重減少・栄養不足・日常生活への支障が生じている場合は、ARFIDを含む専門的な診断が必要になることがあります。かかりつけ医や発達障害支援センターへの相談を検討してください。

発達障害の偏食が大人に与える影響

子どもの頃の偏食がそのまま大人になっても続く場合、日常生活や仕事への影響が出ることがあります。

  • 栄養不足による体調不良:特定の食品しか食べられないことで、鉄・ビタミン・タンパク質などが慢性的に不足しやすくなる
  • 外食・職場の食事での困難:ランチ会・接待・社員食堂など、食事が絡む場面で苦労が生じる
  • 対人関係のストレス:「好き嫌いが多い」と思われ、職場の食事の場に参加しにくくなる
  • 過食傾向のリスク:食べられるものが少ないため、食べられるものを過剰に食べてしまう

偏食による栄養不足や体重の著しい変化が続く場合は、専門機関への相談が重要です。一人で抱え込まず、医師や管理栄養士、発達障害支援センターに相談することが大切です。

大人でもできる発達障害の偏食への対処法

偏食を「直す」という発想より、「特性に合わせて無理なく栄養を摂る・食べられる幅を少しずつ広げる」という視点で対処するほうが、長続きしやすく当事者の負担も小さくなります。

ワナちゃん
ワナちゃん

リオちゃんも「直さなきゃいけない」ってずっと思ってたって言ってた。でも直すより、まず原因を知るほうが大事なんだね。

ワークさん
ワークさん

そうですね。「なぜ食べられないのか」を本人が理解すると、対処の選択肢がぐっと広がりますよ。

食べられない原因を把握する

まず、「何が原因でその食べ物が食べられないのか」を自分なりに把握することが大切です。感覚過敏由来なのか、こだわりによるものか、過去の嫌な記憶なのかによって、対処の方向性が変わります。

食べ物ごとに「何が嫌か(食感?匂い?見た目?味?)」をメモに書き出しておくと、自分の傾向が見えてきます。支援者に伝える際にも役立ちます。

感覚に合わせた調理方法の工夫

食べ物の「感覚的な問題点」がわかれば、調理方法を変えることで食べやすくなる場合があります。

  • 食感が嫌な場合:すり下ろす・ミキサーにかける・細かく刻む・やわらかく煮るなど、食感を変える工夫
  • 匂いが嫌な場合:加熱することで匂いを飛ばす・香りの強い調味料でマスキングする
  • 見た目が嫌な場合:カレーやシチューに混ぜて見えなくする・色が目立たない状態にする
  • 新しいものへの抵抗:いつも食べているものに少量混ぜるところから始める

「食べさせる」より「食べやすくする」という発想の転換が、長期的には食べられるものを増やすことにつながりやすいです。

別の方法で栄養を補う

偏食がある場合、特定の栄養素が偏りやすくなります。食べ物からすべての栄養素を摂ることにこだわらず、サプリメントや栄養補助食品を活用することも一つの方法です。

たとえば、野菜が食べられない場合は野菜ジュースや青汁、鉄分が不足しやすい場合は鉄剤のサプリメントなど。管理栄養士に相談すると、自分の偏食状況に合わせた栄養補給の方法をアドバイスしてもらえます。

食事を楽しむ環境を整える

発達障害のある人の偏食は、食事の環境によって悪化することがあります。「無理に食べさせられる」「失敗を責められる」経験の蓄積が、さらに食への嫌悪感を強めるケースがあります。

逆に、食事を楽しめる環境(好きな音楽・落ち着いた照明・一人で食べられる場所など)を確保することで、少し緊張が和らぐことがあります。外食の場合は、事前にメニューを確認できる店を選ぶことも有効です。

職場での偏食の困りごとと対処

大人の発達障害と偏食の課題として、職場での食事の場面が挙げられます。ランチ会・歓迎会・取引先との会食など、食べ物が絡む場面は避けにくいことも多いです。

職場での偏食によくある困りごと

発達障害のある人が職場の食事の場面で経験しやすい困りごとをまとめました。

  • 会食・ランチ会でほとんど食べられず、「食が細い」「好き嫌いが多い」と思われる
  • 社員食堂のメニューに食べられるものが少なく、毎日同じものを食べることになる
  • 食べ物の匂いが充満するオフィスやランチルームで気分が悪くなる
  • 「なぜ食べないのか」と聞かれ、うまく説明できない

職場での対処のヒント

職場の食事の場面での困りごとは、障害の開示(合理的配慮の申請)によって改善できることがあります。具体的には、次のような配慮を職場に相談することが考えられます。

  • 会食への参加を強要されない配慮
  • デスクや別の場所での食事を許可してもらう
  • 食べ物の匂いが強い場所での業務を避けてもらう
  • 弁当持参・外食との別行動を認めてもらう

障害者雇用(オープン就労)であれば、こうした配慮を比較的申請しやすい環境があります。発達障害のある人の就職・支援制度の活用については、こちらの記事も参考にしてみてください。

発達障害でも就職できる?雇用枠・支援制度の選び方ガイドのアイキャッチ画像 発達障害でも就職できる?雇用枠・支援制度の選び方ガイド

専門機関への相談タイミングと支援制度

偏食が深刻化している場合や、自分一人での対処に限界を感じる場合は、専門機関に相談することが大切です。以下のような状況が続く場合は、早めに相談を検討してみてください。

こんな状態が続いたら相談を
  • 食べられるものが5種類以下など、著しく限られている
  • 体重減少や貧血など、栄養不足による体調不良が続いている
  • 食事の場面で強い不安やパニックが生じている
  • 偏食が原因で職場・家庭・対人関係に支障が出ている

相談できる主な機関

機関相談内容
かかりつけ医・小児科・精神科・心療内科偏食の原因分析・ARFIDの診断・栄養面の評価
発達障害者支援センター発達障害の診断前後のサポート・就労支援・生活支援の相談
管理栄養士偏食がある場合の栄養補給の具体的アドバイス
就労移行支援事業所職場での配慮申請サポート・生活習慣の支援

発達障害者支援センターは、全国の都道府県・指定都市に設置されており、診断前でも相談できる機関です。偏食に限らず、日常生活の困りごと全般について相談することができます。発達障害の支援制度については、発達障害の就職・支援情報もあわせてご参考ください。

発達障害者支援法とは|定義・内容・改正点をわかりやすく解説のアイキャッチ画像 発達障害者支援法とは|定義・内容・改正点をわかりやすく解説

発達障害の偏食に関するよくある質問

発達障害の偏食は大人になれば改善しますか?
一部の方は成長とともに食べられるものが増える場合もありますが、感覚過敏やこだわり特性が強い場合は大人になっても続くことがあります。改善を目指すより、特性に合わせた対処法を見つけることが現実的です。
発達障害の偏食は治療で直せますか?
ARFIDなど深刻な場合は認知行動療法や栄養介入などの専門的なアプローチがあります。ただし「完全に直す」より「食べられるものを少しずつ増やす・栄養を別の方法で補う」という方向性が現実的です。必ず医師にご相談ください。
発達障害でなくても偏食がひどい場合はARFIDですか?
ARFIDは発達障害の有無に関わらず診断されることがあります。ただし診断は医療機関が行うものです。「食べられるものが著しく少ない」「栄養不足による体調不良がある」場合は、まずかかりつけ医に相談してみてください。
嗅覚過敏が強く、食べ物の匂いで気分が悪くなります。どうしたらいいですか?
嗅覚過敏は発達障害の感覚特性の一つです。マスクの着用・換気のよい場所での食事・匂いが強い料理を避けるなどの環境調整が有効な場合があります。ASDの嗅覚過敏については専門記事も参考にしてみてください。
アスペルガーの嗅覚過敏とは|原因と日常・仕事の対処法のアイキャッチ画像 アスペルガーの嗅覚過敏とは|原因と日常・仕事の対処法

まとめ

発達障害の偏食は、感覚過敏・こだわり特性・過去の経験などが複合的に絡み合って生じます。「わがまま」や「育て方の問題」ではなく、脳の感覚処理の特性として理解することが大切です。大人になっても偏食が続く場合、食べ物から摂れない栄養をサプリや代替食品で補う・調理方法を工夫する・職場で合理的配慮を申請するなど、特性に合わせた対処が有効です。深刻な場合は発達障害者支援センターやかかりつけ医に相談してみましょう。

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ワークさん
ワークさん

偏食について悩んでいる方は、まず「なぜ食べられないのか」を自分で把握することから始めてみてくださいね。一人で抱え込まず、相談できる機関を使うことも大切ですよ。

この記事の監修者

ワナワーク編集部

ワナワーク編集部は、国家資格キャリアコンサルタント(キャリア相談歴8年)を有する就職・転職支援の専門家チームです。発達障害・精神疾患のある方の「働く」に寄り添い、厚生労働省などの公的機関や医療の一次情報をもとに、信頼できる情報をお届けしています。

本記事の免責事項

本記事は就職・キャリア支援の観点から作成されたものであり、医療的助言ではありません。診断・治療・服薬等については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。記事内で紹介する職種・働き方は一般的な傾向に基づくものであり、個人差があります。