発達障害で大きな音が苦手な聴覚過敏とは|対処法を解説

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「工事現場の音が怖い」「電車のアナウンスで頭が痛くなる」——発達障害のある人の多くが、このような音への強い過敏さ(聴覚過敏)を経験します。大きな音が苦手なのは、わがままでも気のせいでもありません。

ワナちゃん
ワナちゃん

友達のリコちゃん、発達障害で大きな音がすごく苦手らしくて。駅のホームとかスーパーでもつらいって言ってたんだ。

この記事では、発達障害と聴覚過敏の関係・どんな音が苦手か・大人の仕事や日常での困りごと・イヤーマフなどの対処法・相談先まで、まとめて解説します。

発達障害と聴覚過敏の関係とは

発達障害のある人が「大きな音が苦手」と感じる背景には、感覚処理の違い(感覚過敏)があります。ここでは聴覚過敏の仕組みと、発達障害との関係を整理します。

聴覚過敏とは何か

聴覚過敏とは、日常的な音が一般的な感覚より大きく・強く・不快に感じられ、生活に支障をきたす状態のことです。発達障害のない人が気にしない程度の音でも、当事者には痛みや恐怖を伴うほどの刺激として届くことがあります。

聴力(音の聞こえやすさ)の問題とは異なります。むしろ聴覚自体は正常であるにもかかわらず、脳での音の処理過程で過剰に反応してしまうのが特徴です。必要な音とそうでない音を選別することが難しく、すべての音が同じ強さで押し寄せてくる感覚を覚える人も多くいます。

国立障害者リハビリテーションセンター研究所(発達障害情報のポータルサイト「発達障害のある人のつらい感覚の問題とそのセルフケア」)によると、自閉スペクトラム症(ASD)のある人の60〜90%が何らかの感覚の問題を抱えており、そのなかでも聴覚に関する困りごとは最も多く報告される感覚問題のひとつです。

なぜ発達障害のある人は音に敏感なのか

発達障害のある人が音に敏感になりやすい主な理由は、脳の感覚統合(感覚情報を整理・処理する機能)の違いにあります。感覚統合がうまく働かないと、耳から入ってくる音の量や強さを適切に調整できず、外部からの刺激が過剰に感じられます。

ASDやADHDのある人では、特定の神経回路の結合パターンが発達障害のない人と異なることがあり、音刺激への反応が強くなりやすいとされています。また、不安やストレスが高まると聴覚過敏の症状が悪化することも多く、精神的な状態と感覚の過敏さは密接に関係しています。

「大きな音が苦手」「特定の音がどうしても受け入れられない」という反応は、本人の努力不足や性格によるものではなく、脳の神経学的な特性に由来しています。意志の力で克服しようとしても難しいのは当然であり、まず特性として理解することが重要です。

ASDとADHDで聴覚過敏の出方は違う

聴覚過敏はASDとADHDどちらにも見られますが、その現れ方に違いがある場合があります。ASDの人は特定の種類の音(高音・電子音・人の泣き声など)に強い拒否反応を示しやすい傾向があります。一方でADHDの人は周囲の雑音全般が気になって集中できないという形で困りごとが現れることが多いです。

ASDとADHDが重複している(併存している)人も多く、その場合は双方の特性が組み合わさって現れることもあります。いずれにしても、聴覚過敏の具体的な症状や困りごとは個人差が大きく、一概には言えません。

ワナちゃん
ワナちゃん

リコちゃん、ASDがあって電子音とかの甲高い音がとくに無理って言ってた。ADHDだとまた違う感じになるんだね。

ワークさん
ワークさん

そうですね。障害の種類だけでなく、その人が育ってきた環境や体調によっても変わりますよ。「自分だけの困りごと」として捉えて整理していくことが大切なんですよ。

発達障害の聴覚過敏|どんな音が苦手か

聴覚過敏で苦手とされる音のタイプは、大まかに次の4つに分類できます。それぞれの特徴と、日常で遭遇しやすい場面を確認しましょう。

大きくて突発的な音

予期していない大きな音は、聴覚過敏のある人に強いストレスや恐怖をもたらすことがあります。運動会のスターターピストル、工事現場のくい打ち音、車のクラクション、打ち上げ花火など、突然大きく鳴り響く音が代表的です。

「びっくりしてその場に固まってしまう」「涙が出るほど怖かった」という体験を語る当事者も多く、パニックに近い状態になることもあります。音が終わった後も、動悸や過呼吸などの身体的な反応が続く場合があります。

高音・電子音・特定の種類の音

音量に関係なく、特定の周波数や種類の音が極端に苦手なケースも多いです。子どもの泣き声、電子機器の高周波音、黒板を爪で引っ掻く音、金属音などが代表例として挙げられます。

日常生活では、電子レンジのビープ音、スマートフォンの着信音、駅の発車メロディなどが苦手という声もよく聞かれます。個人によって「どの種類の音が苦手か」は大きく異なるため、自分の苦手なパターンを把握しておくことが対策の第一歩となります。

周囲の雑音が混在する環境

複数の音が同時に飛び込んでくる場所——たとえばオープンオフィスや飲食店、ショッピングモールなど——が苦手な人も多くいます。「必要な音だけを聞き取る」という機能が弱いため、すべての音が同じ強さで飛び込んでくる状態になりやすいのです。

電話の声、隣の人の話し声、空調の音、キーボードの音……これらが一度に入ってくると、脳が疲弊しやすくなります。会議中に話が頭に入らなくなったり、作業中にミスが増えたりする原因になることもあります。

自分でコントロールできない他者の音

特定の人の声や口癖が極端に気になる、というケースもあります。自分ではコントロールできない「他者発の音」への過敏さは、職場や家庭での人間関係に影響することもあります。咀嚼音(食事の音)、鼻をすする音、貧乏ゆすりの音なども、本人にとっては非常に不快に感じられる場合があります。

これは「ミソフォニア(音嫌悪症)」とも関連が指摘されることがありますが、発達障害との関係は研究が進んでいる段階です。当事者にとってはコントロールできない反応であり、悪意や意地悪ではないことを理解する必要があります。

大人の仕事・日常生活での困りごと

聴覚過敏は子どもだけの問題ではありません。大人になっても日常生活や仕事の場面で、さまざまな困りごとが生じます。

ワナちゃん
ワナちゃん

リコちゃん、オープンオフィスの仕事ができなくて転職したって言ってたな。仕事でも相当苦労してるんだよね。

ワークさん
ワークさん

仕事での影響は大きいですね。ただ、対処法を知って環境を整えれば、ずっと楽になるケースも多いんですよ。

職場で集中できない・ミスが増える

オープンオフィスや人が多い職場では、周囲の会話や機器の動作音が絶え間なく入ってきます。脳が常に音の処理に使われてしまうため、本来の業務に集中するためのリソースが不足しやすくなります。その結果、ミスの増加や作業スピードの低下につながることがあります。

打ち合わせ中に他のフロアから大きな声や物音が聞こえてきた、電話口の声がうるさく感じられて会話の内容が頭に入らなかった——このような経験を繰り返すことで、職場での自己評価が下がってしまうこともあります。

疲れやすく仕事後のぐったり感が大きい

音に対して常に神経を使っている状態は、知らず知らずのうちに多大なエネルギーを消耗します。「普通に仕事しただけなのに、帰宅後は何もできないほど疲弊する」というのは、聴覚過敏のある人によく見られる傾向です。

この疲れは怠けや根性不足ではなく、脳が過剰な情報処理をしていることによる消耗です。休みの日に人が多い場所へ出かけると翌日まで疲れが残るという場合も、同様のメカニズムが働いていることがあります。

通勤・外出そのものが苦痛になる

電車や地下鉄では、車内アナウンス、乗客の会話、走行音、ドアが開閉する音など、多種多様な音が混在します。通勤電車の中に乗っているだけで疲れてしまい、職場に着いた時点でもう消耗しているという人も少なくありません。

ラッシュ時間帯の混雑と騒音が重なると、恐怖や過呼吸に近い状態になることもあります。通勤そのものが大きな負担となり、時間差出勤や在宅勤務の検討が必要になるケースもあります。

発達障害の聴覚過敏への対処法

聴覚過敏は「治す」ものではなく、特性と付き合いながら、できる限り負担を減らす方法を整えるのが基本的な考え方です。大きく「グッズを使う方法」と「環境を整える方法」の2つのアプローチがあります。

イヤーマフ・耳栓を活用する

聴覚過敏のセルフケアとして最も広く使われているのが、イヤーマフや耳栓などの聴覚保護グッズです。物理的に音の入力量を減らすことで、脳への刺激を軽減できます。

イヤーマフは耳全体を覆うカップ型で、遮音性が高く、大きな音や突発音への対策に向いています。耳栓は小型で目立ちにくく、長時間の使用に向いています。どちらが合うかは個人差があるため、実際に試してみることをおすすめします。

イヤーマフ選びのポイント
  • 遮音値(NRR/SNR)が高いほど騒音を遮断できる
  • 長時間装着するなら軽量・フィット感を重視
  • 触覚過敏がある場合はクッション素材に注意
  • 子ども用・大人用でサイズが異なる
  • 職場での使用許可について上司に事前相談を

ノイズキャンセリングイヤホンを使う

ノイズキャンセリング機能付きのイヤホン・ヘッドホンは、周囲の環境音を電子的に打ち消す技術を使っており、音楽を流さなくても騒音を軽減できます。オープンオフィスや電車内でのセルフケアに向いています。

ただし、完全に音を遮断するわけではなく、高周波音や突発音には対応しきれない場合もあります。電車内では安全のために音を完全に遮断しないよう注意が必要です。ホワイトノイズ(一定の背景音)を流す方法も、特定の音が気になりにくくなると感じる人もいます。

環境を整える・苦手な場所を把握する

自分がとくに苦手な音・場所・時間帯を把握し、可能な範囲で接触を減らす工夫が有効です。「いつ・どこで・どんな音がつらいか」を記録しておくと、医師や支援者への説明にも役立ちます。

たとえば、通勤時間を混雑のピーク前後にずらす、ランチは静かな店を選ぶ、職場での席を騒がしい場所から遠ざける、といった細かい工夫の積み重ねが、日々の疲弊を大幅に軽減することにつながります。

職場での合理的配慮を求める方法

2024年4月から施行された改正障害者差別解消法により、すべての事業者に合理的配慮の提供が義務づけられています。聴覚過敏への配慮を職場に求めることは、正当な権利です。

どんな配慮を求めることができるか

聴覚過敏に関して職場で求められる主な合理的配慮には、次のようなものがあります。

職場で求められる配慮の例
  • 座席を静かな場所(壁際・窓側・個室)に変更する
  • イヤーマフや耳栓・ノイズキャンセリングイヤホンの業務中使用を許可する
  • 音の大きい業務機器(シュレッダーなど)の担当から外す
  • 集中が必要な業務時は声かけを控えてもらう
  • 在宅勤務やフレックスタイム制の導入を相談する
  • 休憩時に静かな場所へ移動できるようにする

伝え方のポイント

「何の音がどんな状況でつらいのか」を具体的に伝えると、雇用者側も対応を検討しやすくなります。「うるさい」という曖昧な表現より、「オープンオフィスの電話音と複数の会話が重なる場面で、集中力が著しく低下し、ミスが増えます」といった具体的な説明の方が、配慮につながりやすいです。

医師やカウンセラーから診断書・意見書を取得しておくと、配慮の交渉がよりスムーズになることがあります。障害者手帳を持っている場合は、手帳の種類と等級を伝えることで、会社側の制度的な対応が取りやすくなる場合もあります。

聴覚過敏とうまく付き合う仕事選びのコツ

聴覚過敏があっても働きやすい仕事は存在します。職場環境の特徴から仕事を選ぶことで、消耗を減らしながら長く働きやすくなります。

音の少ない環境で働ける職種を選ぶ

在宅ワーク・フリーランス・個室作業など、自分で音環境をコントロールしやすい働き方が向いている場合があります。たとえばライター、デザイナー、プログラマーなどのIT系職種は、リモートワークが整備されていることも多く、聴覚過敏を持つ人にも取り組みやすい環境が整いやすいです。

図書館司書、データ入力、経理・事務(個室型)なども、比較的静かな環境で作業できることが多く、音のコントロールがしやすいといえます。発達障害のある人に向いてる仕事全般については、発達障害に向いてる仕事をまとめた記事も参考にしてみてください。

避けた方がよい職場環境の特徴

逆に、大きなオープンフロア・コールセンター・飲食店ホール・工場・建設現場など、常に大きな音や複数の音が混在する職場は、聴覚過敏のある人には大きな負担になりやすいです。求人情報で職場環境を確認したり、見学を申し込んだりして、事前に音の状況を把握しておくことをおすすめします。

面接時に「静かに集中できる環境で働きたい」という希望を伝えることも、ミスマッチを防ぐために有効です。合理的配慮として交渉できる余地があるかどうかも、事前に確認しておくとよいでしょう。

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聴覚過敏の相談先と支援機関

聴覚過敏に悩んでいる場合、一人で抱え込まずに専門家や支援機関に相談することが大切です。どこに相談すればよいか迷ったときは、以下を参考にしてみてください。

医療機関(精神科・心療内科・耳鼻科)

聴覚過敏が日常生活や仕事に大きく支障をきたしている場合は、まず医療機関への相談が基本です。発達障害が疑われる場合は精神科または心療内科で相談し、必要であれば発達障害の診断を受けることで、適切な支援や職場配慮につながります。

耳鼻咽喉科では、聴覚過敏の原因が耳の機能にあるかどうかを調べることができます。耳鳴りや難聴との鑑別が必要な場合も、まずは耳鼻科で聴力検査を受けることをおすすめします。

発達障害者支援センター

各都道府県に設置されている発達障害者支援センターでは、発達障害やその特性(聴覚過敏を含む感覚の問題)に関する無料相談を受け付けています。診断の有無に関わらず相談可能なケースも多く、就労・生活・関係機関への紹介なども対応しています。

都道府県ごとに窓口が異なるため、国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害情報・支援センター」のサイトから、お住まいの地域の窓口を検索できます。

就労移行支援・ハローワーク専門援助窓口

仕事との両立に悩んでいる場合は、就労移行支援事業所への相談も選択肢のひとつです。就労移行支援では、自分の特性に合う仕事や職場環境の見つけ方、職場への伝え方、面接練習などをサポートしてもらえます。障害者手帳がない段階でも相談できる場合があります。

ハローワークの専門援助窓口(障害者専用窓口)では、発達障害のある人の就職・転職相談を専門のスタッフが対応しています。障害者雇用枠の求人紹介や、就職後のフォローアップも受けられます。

発達障害の就労移行支援とは|対象・料金・選び方を解説のアイキャッチ画像 発達障害の就労移行支援とは|対象・料金・選び方を解説

発達障害の聴覚過敏に関するよくある質問

大きな音が苦手な発達障害の聴覚過敏について、よく寄せられる疑問にお答えします。

聴覚過敏は大人になると改善しますか?
個人差があります。環境調整やセルフケアによって日常の負担が軽減されることはありますが、聴覚過敏そのものが完全になくなるケースは限られます。無理に慣れようとするよりも、グッズや環境の工夫で上手に付き合うことが長期的に有効です。
発達障害の診断がなくても聴覚過敏の支援は受けられますか?
発達障害者支援センターや一部の就労移行支援では、診断前でも相談可能なケースがあります。また、医療機関で聴覚過敏の困りごとを相談し、対処法についてアドバイスをもらうことは診断なしでも可能です。まずは窓口に問い合わせてみましょう。
職場でイヤーマフをつけていたら変に思われませんか?
聴覚過敏保護用のシンボルマークをイヤーマフに貼ることで、周囲に「音への配慮が必要」と知らせることができます。また、事前に上司や同僚に特性を説明しておくと、理解が得られやすくなります。正当な合理的配慮として伝えることで、職場内の認識が変わるケースも多いです。
聴覚過敏があっても一般雇用で働けますか?
一般雇用でも、合理的配慮の申し出によって職場環境を整えることは可能です。一方、障害者雇用枠では特性に対する配慮が最初から組み込まれているケースも多く、選択肢のひとつになります。どちらが自分に合うかは、支援機関などで相談しながら判断するとよいでしょう。
子どもの聴覚過敏はどこに相談すればいいですか?
お子さんの場合は、かかりつけの小児科や、発達障害に詳しい小児神経科・児童精神科への相談が入口となります。お住まいの地域の発達障害者支援センターや、市区町村の子ども発達支援センターでも相談を受け付けているところが多いです。

まとめ

発達障害のある人が「大きな音が苦手」と感じるのは、脳の感覚処理特性(聴覚過敏)によるものであり、わがままや気のせいではありません。ASDでは特定の音への強い拒否反応、ADHDでは雑音による集中の乱れといった形で現れやすく、個人差も大きいのが特徴です。

対処法としては、イヤーマフ・ノイズキャンセリングイヤホンの活用、環境調整、職場への合理的配慮の申し出が効果的です。仕事選びでは、音環境をコントロールしやすい職種・働き方を選ぶことが、長く働き続けるための鍵となります。一人で抱え込まず、医療機関や発達障害者支援センター、就労移行支援などの専門機関に相談することも大切です。

発達障害の感覚過敏全般(視覚・触覚・嗅覚なども含む)について知りたい人は、あわせて参考にしてみてください。

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ワークさん
ワークさん

リコちゃんのように悩んでいる方は、ぜひ一度専門家に相談してみてくださいね。診断や治療が必要な場合は、必ず医療機関にご相談ください。

この記事の監修者

ワナワーク編集部

ワナワーク編集部は、国家資格キャリアコンサルタント(キャリア相談歴8年)を有する就職・転職支援の専門家チームです。発達障害・精神疾患のある方の「働く」に寄り添い、厚生労働省などの公的機関や医療の一次情報をもとに、信頼できる情報をお届けしています。

本記事の免責事項

本記事は就職・キャリア支援の観点から作成されたものであり、医療的助言ではありません。診断・治療・服薬等については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。記事内で紹介する対処法・働き方は一般的な傾向に基づくものであり、個人差があります。