「毎日十分寝ているのに日中も眠くなる」「休日は12時間以上寝てしまう」と感じている大人の方の中には、発達障害との関連が背景にあることがあります。

友達のハナちゃん、発達障害があるんだけど、休日にすごく長く寝てしまうって悩んでた。これって特性と関係あるのかなあ。
この記事では、発達障害のある大人がよく寝る(寝すぎ・過眠)の主な理由、仕事への影響と工夫、相談・受診の目安をまとめて解説します。
発達障害とよく寝る・過眠の関係
ここでは、発達障害と睡眠の問題がどのように結びついているかを解説します。「よく寝る」が特性と関係していることは、研究からも確認されています。
発達障害のある人に睡眠障害が多い理由
ADHD・ASDなどの発達障害がある人は、睡眠に関する悩みを抱えやすいとされています。国内の研究によると、ASDのある成人の34.8%、ADHDのある成人の36.1%が「不眠で医療機関を受診した」と報告されています。
これは単なる不眠だけでなく、過眠(日中に強い眠気がある・睡眠時間が長すぎる)の形で現れることも多く、発達障害の特性と深く関わっています。武田薬品工業の「発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)」では、発達障害と睡眠・覚醒障害が併存しやすいことが解説されています。
「よく寝る」「寝すぎ」と発達障害の関係
「よく寝る」「寝すぎてしまう」という状態は、医学的には「過眠(過眠症)」と呼ばれます。夜間に十分な時間眠っているにもかかわらず日中に強い眠気が残る状態、あるいは必要以上の長時間睡眠を必要とする状態が該当します。
発達障害のある人では、脳内の神経伝達物質(ドーパミンやノルアドレナリン)の働きが影響し、覚醒の維持が難しくなることがあります。また、睡眠の質自体が低下しやすく、長時間眠っても疲れが取れず「もっと寝たい」という状態になりやすいといわれています。
発達障害でよく寝る・寝すぎる主な原因
ここでは、発達障害のある大人が過眠・長時間睡眠になりやすい背景にある主な原因を解説します。

ハナちゃんの場合、夜更かしして好きなことに熱中して、次の日ぐったりする…ってパターンが多いみたいで。過集中ってやつかな?

それは過集中の反動ですね。発達障害の方が「よく寝る」背景にはいくつかの要因が絡んでいることが多いんですよ。
睡眠の質の低下(夜間の睡眠が浅い)
発達障害のある人では、夜間の睡眠そのものの質が低下しやすいことがあります。入眠に時間がかかったり、夜中に何度も目が覚めたりする(中途覚醒)ことで、睡眠時間が長くなっても疲れが取れにくい状態が続きます。
睡眠の深い段階(ノンレム睡眠)が不足すると、脳と体の回復が不十分になります。その結果「もっと寝なければ」という感覚が強まり、長時間横になる傾向が生まれやすくなります。
概日リズムのズレ(体内時計の乱れ)
概日リズム(サーカディアンリズム)とは、体内時計が刻む約24時間のリズムのことです。発達障害のある人はこの体内時計が乱れやすく、睡眠と覚醒のタイミングが一般的なリズムとずれやすいといわれています。
たとえば、就寝時刻が深夜2〜3時になり、目が覚めるのが昼前という「睡眠相後退」が生じやすい傾向があります。こうなると朝に起きられないため睡眠時間が長くなり、「よく寝る」状態につながります。
過集中の反動による疲労蓄積
ADHDやASDに見られる「過集中(ハイパーフォーカス)」は、関心のあることに何時間も没頭する状態です。過集中の後は脳と体が著しく疲弊するため、翌日・週末に長時間眠って回復しようとする反動が起きやすいといわれています。
また、日常的に「発達障害のない人に合わせた環境」で働き続けることによる慢性的な疲労も、長時間睡眠を必要とする要因の一つです。特性に合わない環境での社会生活は、発達障害のない人と比べてエネルギー消費が大きくなる傾向があります。
服薬の副作用・薬の影響
発達障害の治療薬(メチルフェニデート・アトモキセチンなど)や、併存する不安・うつへの薬が眠気に影響することがあります。服薬中に「よく寝るようになった」と感じたら、自己判断で薬をやめず、まず処方した医師に相談することが重要です。
薬の種類・量・服用タイミングによって眠気の出方は異なります。医師との相談の中で、日中の眠気の状況を具体的に伝えることが改善への第一歩になります。
うつ病や睡眠障害の併存
発達障害のある人はうつ病・不安障害などの二次障害を抱えやすく、これらの状態が「よく寝る」に影響することがあります。とくにうつ状態では過眠(寝すぎ)が症状として現れやすいことが知られています。
また、ナルコレプシーや特発性過眠症などの過眠症を併発している可能性もあります。「寝ても寝ても眠い」「朝起きても頭が重い」状態が長く続く場合は、専門機関への相談を検討することをおすすめします。
発達障害のよく寝る・過眠が仕事に与える影響
以下では、過眠が仕事面に及ぼしやすい影響と、それぞれの工夫について解説します。
遅刻・欠勤につながりやすい
概日リズムのズレや長時間睡眠によって、朝決まった時間に起きられず遅刻・欠勤が増えることがあります。本人の意欲や努力とは関係なく、睡眠のリズムが仕事の時間に合わないという構造的な問題です。
フレックスタイム制やテレワーク可能な職場を選ぶことで、生活リズムとの摩擦を軽減できる場合があります。合理的配慮として始業時刻の調整を職場に相談できるケースもあります。
日中のパフォーマンス低下
夜間の睡眠の質が低い場合、昼間の集中力・注意力・記憶力が落ちやすくなります。ミスが増えたり、業務に時間がかかったりすることで仕事への自信を失うケースもあります。
昼休みに10〜15分程度の短い仮眠(ナップ)を取り入れると、午後の注意力が回復する場合があります。ただし長時間の仮眠は夜の睡眠に影響しやすいため、30分以内を目安にすることが推奨されています。
過眠を隠すことによるストレス
「怠けていると思われたくない」という意識から、過眠の状況を職場に言えず一人で抱え込むことがあります。これが慢性的なストレスとなり、二次障害(うつ・適応障害)のリスクを高めることがあります。
障害者手帳の取得や障害者雇用枠での就労を選択することで、睡眠の特性に関する配慮(業務量・始業時刻)を職場と交渉しやすくなる場合があります。支援制度の利用を検討することも一つの選択肢です。
発達障害と日中の眠気について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考になります。
発達障害のよく寝る・過眠への対処法
ここでは、日常生活で取り組める対処法と、医療的なサポートの視点を解説します。

ハナちゃんって自力でどうにかしようとして、かえって疲れてるんだよね。何か具体的なコツってあるのかな?

無理に直そうとするより、リズムを整える工夫と医療のサポートを組み合わせるのが近道ですよ。
起床・就寝時刻を一定に保つ(睡眠衛生)
概日リズムを整えるうえで最も基本的なのが、毎日同じ時刻に起き・同じ時刻に就寝する習慣です。休日でも起床時刻を平日から2時間以内にとどめることが、リズムの崩れを防ぐうえで効果的とされています。
起床後は窓を開けて自然光を浴びるだけでも体内時計のリセットに役立ちます。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、起床後の光の活用が推奨されています。
過集中をタイマーでコントロールする
就寝前に過集中が起きやすい場合、「22時になったらアラームを鳴らして活動をやめる」というルールを音で知らせる仕組みが有効な場合があります。視覚情報のみでは切り替えが難しい方も、聴覚的な刺激(アラーム音)で行動を切り替えやすくなることがあります。
就寝1〜2時間前にはスマートフォン・タブレットの画面輝度を下げる、または使用をやめる工夫も概日リズムの維持に役立ちます。ブルーライトが体内時計に影響を与えることが研究で示されています。
睡眠記録をつけて傾向を把握する
スマートフォンの睡眠記録アプリや紙のノートに「就寝・起床時刻・日中の眠気の程度」を記録しておくと、自分の睡眠リズムのパターンが見えてきます。記録は医療機関を受診した際にも診断の参考になるため、継続して残しておくとよいでしょう。
「月曜日は特に眠い」「過集中した翌日は長く寝る」といったパターンを把握することで、スケジュールの組み方や仕事量の調整に活かせます。
医療機関に相談・治療を検討する
生活習慣の改善だけでは限界がある場合は、精神科・心療内科への相談が選択肢になります。発達障害の特性や併存する睡眠障害・うつ状態に対して、薬物療法・認知行動療法・環境調整などの治療的アプローチが用いられる場合があります。
睡眠の問題は本人の「意志の問題」ではありません。専門家と相談しながら自分に合った方法を見つけていくことが、無理なく長く働き続けるうえで重要です。
発達障害と朝起きられない問題についてはこちらの記事もあわせてご覧ください。
発達障害のよく寝る・過眠に関する受診の目安
ここでは、どのような状態のときに医療機関への相談を検討したほうがよいかを解説します。
受診を検討したい状態のサイン
以下のような状態が続く場合は、専門家への相談を視野に入れることをおすすめします。
- 8〜10時間以上寝ても疲れが取れない日が続く
- 日中に我慢できない眠気が起きて仕事・生活に支障が出る
- 気分の落ち込み・やる気のなさが眠気と一緒に続いている
- 過眠の状態が2週間以上続いている
- 服薬開始後に眠気が増した
相談できる機関・窓口
睡眠の問題を相談できる機関には以下のようなものがあります。
| 相談先 | 特徴 |
|---|---|
| 精神科・心療内科 | 発達障害の診断・睡眠障害の治療が受けられる。かかりつけ医からの紹介も可 |
| 発達障害者支援センター | 各都道府県に設置。生活・就労の相談に応じてくれる |
| 就労移行支援事業所 | 働くための準備段階の相談・支援を受けられる |
| ハローワーク専門援助窓口 | 障害のある方の就労相談に特化した窓口 |
発達障害ナビポータル(hattatsu.go.jp)では、お住まいの地域の発達障害者支援センターを検索できます。
発達障害のある方向けの支援制度について詳しくは、こちらも参照してください。
発達障害全般の就職・支援について詳しく知りたい方は、発達障害のある人の就職・転職についてまとめたページもご覧ください。
ADHDの睡眠問題(眠気・朝の目覚め)が気になる方は、ADHDに関する就職・転職情報をまとめたページもあわせてご覧ください。
発達障害でよく寝る・過眠に関するよくある質問
よくある質問と、それに対する回答をまとめました。
- 発達障害があるとロングスリーパーになりやすいですか?
- 発達障害と長時間睡眠の関係を示す研究はあります。ただし、ロングスリーパー(一般的に10時間以上の睡眠を必要とする状態)かどうかは個人差が大きく、発達障害だから必ずなるわけではありません。
- 発達障害の過眠は薬で改善できますか?
- 医師の判断のもと、発達障害の治療薬・睡眠調整薬などが検討されることがあります。ただし薬が合うかどうかは個人差があり、自己判断で服薬・服薬中止をしないことが重要です。
- 寝すぎは発達障害の診断の根拠になりますか?
- 過眠は発達障害の診断基準そのものには含まれていません。ただし、診察の際に睡眠の状況を医師に伝えることは、適切な治療方針を決めるうえで重要な情報になります。
- 発達障害の過眠に有効な生活習慣はありますか?
- 毎朝同じ時刻に起きて光を浴びること、就寝前のブルーライトを控えること、過集中をタイマーで区切ることなどが有効な場合があります。改善には個人差があるため、専門家への相談も組み合わせることが大切です。
- 発達障害の過眠で仕事を続けるにはどうすればよいですか?
- フレックスタイムやテレワーク可能な職場を選ぶ、障害者雇用枠で始業時刻などの合理的配慮を求める、就労移行支援を活用して自分に合った働き方を模索するなどの方法があります。
まとめ
発達障害のある大人が「よく寝る・寝すぎる」のは、睡眠の質の低下・概日リズムのズレ・過集中の反動・服薬の影響・うつや睡眠障害の併存など、複数の要因が絡んでいる場合が多くあります。これらは本人の「意志の弱さ」ではなく、特性や状態に基づく睡眠の問題です。
仕事への影響(遅刻・日中の集中力低下)を減らすためには、起床・就寝時刻を整える睡眠衛生の実践、過集中をタイマーで区切る工夫、フレックスタイムや障害者雇用など働き方の選択が役立ちます。生活習慣の改善で対処が難しい場合は、精神科・心療内科への相談も大切な選択肢です。

眠りの悩みが続くときは一人で抱えずに、医療や支援を使うことをためらわないでくださいね。本記事はワナワーク編集部が監修しています。
ワナワーク編集部
ワナワーク編集部は、国家資格キャリアコンサルタント(キャリア相談歴8年)を有する就職・転職支援の専門家チームです。発達障害・精神疾患のある方の「働く」に寄り添い、厚生労働省などの公的機関や医療の一次情報をもとに、信頼できる情報をお届けしています。
本記事は就職・キャリア支援の観点から作成されたものであり、医療的助言ではありません。診断・治療・服薬等については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。記事内で紹介する職種・働き方は一般的な傾向に基づくものであり、個人差があります。

