発達障害でも生活保護は受けられる?条件と申請の流れ

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「働けない状況なのに、生活保護を申請してもいいのだろうか」と迷う発達障害のある方は少なくありません。生活保護は、状況に合えば発達障害のある人でも申請できる国の制度です。

ワナちゃん
ワナちゃん

友達のユイちゃん、発達障害で仕事が続かなくてお金が本当にないらしくて…。生活保護って申請していいのかなって聞かれたんだよね。

この記事では、発達障害のある人が生活保護を受けられる条件、申請の手順、障害年金や就労支援との関係をわかりやすく解説します。

生活保護とは|発達障害のある人でも申請できる制度

ここでは、生活保護制度の基本と、発達障害のある人との関係について確認します。

生活保護は憲法で保障された国民の権利

生活保護は、憲法第25条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」に基づいて国が保障する制度です。厚生労働省の「生活保護制度」によれば、生活に困窮するすべての国民を対象とした制度であり、申請は義務でも恥でもなく、権利として定められています。

発達障害の有無は申請の絶対的な条件ではありません。現在の収入・資産・就労の状況が一定の基準を満たすかどうかが判断の中心になります。発達障害のある人が「働けない」「収入が最低生活費を下回る」状況にある場合は、申請の対象になりえます。

8種類の扶助と生活保護費の目安

生活保護には、生活・住宅・教育・医療・介護・出産・生業・葬祭の8種類の扶助があります。医療扶助では医療費が原則無料になるため、精神科・心療内科への通院を続けやすくなる点は、発達障害のある人にとって大きなメリットです。

生活保護費(生活扶助+住宅扶助)の目安は、単身世帯で月6〜9万円程度(地域や状況により異なります)とされています。ただし実際の金額は、居住地域の級地区分(東京など大都市は高め)、世帯構成、その他の収入・資産によって変わるため、必ず地元の福祉事務所に確認することが重要です。

発達障害のある人が生活保護を受けられる主な条件

以下では、生活保護を受けるために必要な4つの要件を順に確認します。

ワナちゃん
ワナちゃん

「発達障害があるだけじゃ受けられないの?」ってユイちゃんに聞かれたけど、何が基準なんだろう…。

ワークさん
ワークさん

判断基準は「障害の有無」じゃなく「生活の困窮状況」なんですよ。4つの要件をすべて満たす必要があります。

収入が最低生活費を下回っていること

世帯の収入合計(給与・年金・手当など)が、厚生労働大臣の定める最低生活費を下回っていることが、受給の最も基本的な条件です。最低生活費は地域・世帯構成によって異なり、超過分は支給されません(差額支給)。障害年金や親族からの仕送りも収入として算定されますが、最低生活費との差額がプラスになる場合は受給が認められます。

活用できる資産がないこと

預貯金・土地・車など、生活費に充当できる資産がある場合はそちらを先に使うことが求められます。ただし、生活に必要な最低限の資産(居住用の住宅など)は保有が認められる場合があります。「資産がまったくなければ申請できない」わけではなく、あくまで活用できるものを先に使うという前提です。

働く能力がないまたは著しく制限されていること

発達障害が原因で就労が困難な状況にある場合、「働く能力の活用が難しい」と判断されることがあります。ここで重要なのは、「発達障害だから働けない」という単純な話ではなく、医師の診断書や実際の就労困難の状況を総合的に判断されるという点です。就労移行支援を利用中であったり、二次障害(うつ・不安障害など)を抱えている場合も、就労困難の根拠として認められることがあります。

他の制度や親族からの援助を優先していること

生活保護は「最後のセーフティネット」という位置づけのため、利用できる他の制度(障害年金・傷病手当金・失業給付など)を先に活用することが前提です。また、扶養義務者(親・兄弟など)からの援助が受けられるかどうかも確認されます。ただし、扶養照会があるからといって必ず援助を受けなければならないわけではなく、援助が難しい場合は申請が認められる余地があります。

発達障害と生活保護の申請手順

ここでは、実際の申請の流れをステップごとに確認します。発達障害のある人が一人で申請窓口に向かうのが不安な場合は、支援者同行の活用も選択肢です。

居住地の福祉事務所に相談する

申請は、現在住んでいる地域を管轄する福祉事務所(市区町村役場の生活福祉課など)で行います。まずは電話や窓口で「生活保護の相談をしたい」と伝えるだけで構いません。申請書の提出と同日に審査が始まるわけではなく、事前相談だけすることも可能です。窓口で「申請させてほしい」と明示することが重要で、相談だけで終わらないように注意しましょう。

申請書と必要書類を提出する

申請に必要な主な書類は以下のとおりです。

申請に必要な主な書類
  • 生活保護申請書(福祉事務所で入手できる)
  • 資産申告書(預貯金・不動産などの状況)
  • 収入申告書(給与・年金・各種手当など)
  • 医師の診断書(発達障害・二次障害の状況)
  • 身分証明書(マイナンバーカード・保険証など)
  • 通帳のコピー(収入・資産の確認用)

発達障害の場合、医師の診断書は「就労困難の根拠」として重要な書類になります。診断書には、日常生活・就労への影響を具体的に記載してもらうと審査がスムーズになることがあります。

家庭訪問と審査(申請から14日以内に決定)

申請後、ケースワーカーが自宅を訪問し、生活状況・資産・家族構成などを確認します。その後、原則として申請から14日以内(調査が必要な場合は最大30日)に可否の通知が届きます。審査が通れば、申請日にさかのぼって保護費が支給されます。

申請は「行政書士・支援員・家族」の同行も可能

福祉事務所の窓口には一人で行く必要はありません。家族・支援者・行政書士などの同行が認められています。発達障害者支援センターに相談すれば、同行支援につないでもらえることもあります。

生活保護と障害年金の関係|発達障害で両方もらえる?

発達障害のある人にとって、障害年金との関係は重要なポイントです。以下で仕組みを整理します。

ワナちゃん
ワナちゃん

ユイちゃん、障害年金も申請中らしいんだけど、生活保護と両方もらえるの?

ワークさん
ワークさん

両方申請することは可能ですよ。ただ「合計で増える」わけじゃなく、差額調整という仕組みがあるんです。

併給は可能だが差額調整される

生活保護と障害年金の同時受給は可能ですが、仕組みとして「障害年金額が収入としてカウントされ、生活保護費からその分が差し引かれる」という差額調整が行われます。たとえば、障害基礎年金2級(令和8年度は年約84.7万円・月約7.1万円)を受給している場合、その分だけ生活保護費が減額されます。結果として受取総額は変わらないか、または障害者加算などの関係でわずかに増える場合があります

発達障害で障害年金を申請できる条件

日本年金機構の「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」によれば、障害年金を受けるには以下の3条件が必要です。

障害基礎年金の3つの受給要件
  1. 初診日が国民年金加入期間中または20歳前〜65歳未満の非加入期間にあること
  2. 障害認定日に1級または2級の障害状態に該当すること
  3. 保険料納付要件(原則として3分の2以上の期間が納付済み・免除)を満たすこと

発達障害の場合、初診日は「発達障害で初めて医師の診察を受けた日」が基本です。20歳前に初診がある場合は、20歳から支給対象となる「20歳前傷病による障害基礎年金」の対象になる場合があります。障害の程度が1級・2級に該当するかどうかは専門的な判断が必要なため、社会保険労務士などの専門家に相談することも有効です。

障害者加算で生活保護費が増える可能性がある

精神障害者保健福祉手帳1級・2級を持っている場合、生活保護に「障害者加算」が付き、保護費が月1〜2万円程度増額されることがあります。加算額は地域と障害等級によって異なります。なお、手帳3級は加算の対象外です。手帳を取得済みの場合は福祉事務所に必ず申し出てください。

発達障害のある人が取得できる手帳の詳細は、以下の記事も参考にしてみてください。

発達障害の手帳3級のメリットとは|申請方法と活用法を解説のアイキャッチ画像 発達障害の手帳3級のメリットとは|申請方法と活用法を解説

生活保護と就労移行支援は併用できる

生活保護を受けながらでも、就労移行支援を利用して自立を目指すことが可能です。この章では、その仕組みを整理します。

就労移行支援は生活保護受給者でも利用できる

就労移行支援は、生活保護を受給しながら並行して利用できます。就労移行支援の利用料は所得に応じて異なり、生活保護受給者は原則として無料です。就労移行支援の期間中に「収入がない・就労できない」状況が継続する場合も、生活保護の停止や廃止にはなりません(就労準備の活動として認められます)。

就労移行支援では、ビジネスマナー・コミュニケーション・時間管理などのスキルトレーニングに加え、就職活動のサポートも受けられます。発達障害のある人が就職を安定して続けるための支援に特化した事業所も増えています。

発達障害のある人の就労移行支援の活用方法については、以下の記事に詳しくまとめています。

発達障害の就労移行支援とは|対象・料金・選び方を解説のアイキャッチ画像 発達障害の就労移行支援とは|対象・料金・選び方を解説

就職して収入が増えたら生活保護はどうなる?

就労移行支援などを経て就職した場合、収入が最低生活費を超えれば生活保護は廃止となります。ただし、段階的に収入が増える場合は差額調整が行われ、急に打ち切りになるわけではありません。また、就労開始後も一定期間は「就労自立給付金」が支給され、急激な生活変化を緩和する制度もあります。

収入の変動はケースワーカーに随時報告する義務があります。正直に申告することで不正受給を避け、スムーズに自立へ移行できます。

生活保護を申請するときの注意点

申請前に知っておくと安心できるポイントを整理します。

窓口で「申請させてください」と明確に伝える

福祉事務所の窓口では、相談段階で「他の制度を調べてから」「もう少し様子を見て」などと申請を後回しにされるケース(いわゆる「水際作戦」)が問題になることがあります。申請を希望する場合は、「生活保護を申請したい」とはっきり伝えることが重要です。申請書を受け取る権利があり、窓口が受理を拒否することは原則許されません。

扶養照会への対応

申請後、行政が申請者の親族に「援助できるか」を確認する「扶養照会」が行われる場合があります。これを懸念して申請をためらう人も少なくありませんが、扶養照会は申請の必須条件ではなく、親族から援助を受けられない場合も申請は認められます。家族との関係が複雑な場合や、DV・虐待の過去がある場合は、支援者に事前に相談することが望ましいです。

受給中は毎月の収入申告が必要

生活保護の受給中は、毎月の収入(アルバイト収入・年金・仕送りなど)を福祉事務所に申告する義務があります。申告漏れや虚偽申告は不正受給とみなされ、保護の停止・廃止のほか、返還請求の対象になることがあります。発達障害の特性として書類管理が苦手な場合は、ケースワーカーや支援者に相談して、申告のサポートを依頼することも選択肢です。

生活保護以外に活用できる支援制度

生活保護は「最後のセーフティネット」ですが、発達障害のある人が活用できる制度は他にもあります。

ワークさん
ワークさん

生活保護と並行して使える制度や、申請前に確認しておきたい支援もあります。組み合わせで生活を安定させる方法もありますよ。

生活困窮者自立支援制度

生活保護の一歩手前にある制度として、生活困窮者自立支援制度があります。経済的に困窮しているが生活保護の受給要件を満たさない場合でも、就労支援・家計相談・住宅確保給付金(家賃補助)などを受けられます。福祉事務所や自立支援相談窓口に相談することで利用できます。

傷病手当金・失業給付

会社に在籍しながら病気・障害で休職した場合は傷病手当金(給与の3分の2程度が最大1年6か月支給)を受けられる場合があります。また、雇用保険に加入していた人が退職した場合は、失業給付(雇用保険の基本手当)が受けられます。これらは生活保護申請前に活用を検討すべき制度です。

障害者雇用枠での就職

厚生労働省の「発達障害者の就労支援」では、ハローワーク・地域障害者職業センター・就労移行支援といった多様な支援機関の活用が紹介されています。障害者手帳を取得した上で障害者雇用枠を利用すると、配慮が得られやすくなり、長期就労につながりやすいケースも少なくありません。

発達障害のある人の就職活動の進め方については、以下の記事も参考にしてみてください。

発達障害でも就職できる?雇用枠・支援制度の選び方ガイドのアイキャッチ画像 発達障害でも就職できる?雇用枠・支援制度の選び方ガイド

また、一人暮らしで生活設計が不安な場合は、以下の記事も参考になります。

発達障害のある人の一人暮らし|困りごと別の工夫と支援のアイキャッチ画像 発達障害のある人の一人暮らし|困りごと別の工夫と支援

発達障害と生活保護に関するよくある質問

申請を検討する際によく寄せられる疑問にお答えします。

発達障害の診断がないと生活保護は申請できませんか?
診断がなくても申請は可能です。ただし、就労が困難な状況の説明に医師の意見書があると審査がスムーズになる場合があります。まずは福祉事務所に相談してみてください。
生活保護を受けながら障害年金を申請してもよいですか?
はい、可能です。生活保護受給中でも障害年金を申請できます。受給できた場合、障害年金分は収入として算定され生活保護費が減額されますが、障害者加算が付く場合など総額が増えるケースもあります。
一人で申請窓口に行くのが不安です。誰かに同行してもらえますか?
家族・支援者・行政書士などの同行が認められています。発達障害者支援センターや生活困窮者支援団体に相談すれば、申請同行の支援を受けられる場合があります。
生活保護を受けながら就労移行支援に通えますか?
はい、可能です。生活保護受給中でも就労移行支援を利用できます。受給者は利用料が原則無料で、就労準備の活動として認められます。就職して収入が安定すれば段階的に保護が終了します。
親がいると生活保護は申請できませんか?
親がいるだけでは申請できないわけではありません。扶養照会が行われますが、親が援助できない・関係が断絶している場合など、援助を受けられない事情があれば申請が認められる場合があります。

まとめ

発達障害のある人でも、収入が最低生活費を下回り、資産や就労・他制度の活用が難しい状況であれば生活保護を申請できます。発達障害の診断があること自体は受給の条件ではなく、生活の困窮状況が中心的な判断基準です。障害年金との併給も可能で、差額調整の仕組みや障害者加算を理解しておくことが大切です。生活保護を受けながら就労移行支援に通い、段階的に自立を目指すことも現実的な選択肢の一つです。

本記事はワナワーク編集部(キャリア相談歴8年・国家資格キャリアコンサルタント保有)が執筆・監修しています。

ワークさん
ワークさん

一人で抱え込まず、まず福祉事務所や支援センターに相談してみてくださいね。制度は使うためにありますよ。

この記事の監修者

ワナワーク編集部

ワナワーク編集部は、国家資格キャリアコンサルタント(キャリア相談歴8年)を有する就職・転職支援の専門家チームです。発達障害・精神疾患のある方の「働く」に寄り添い、厚生労働省などの公的機関や医療の一次情報をもとに、信頼できる情報をお届けしています。

本記事の免責事項

本記事は就職・キャリア支援の観点から作成されたものであり、医療的助言ではありません。診断・治療・服薬等については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。生活保護制度の詳細や受給の可否については、必ず居住地の福祉事務所にご確認ください。記事内の制度説明は作成時点(2026年6月)の情報に基づいており、制度変更により内容が異なる場合があります。