「発達障害があると就職は難しい」と思っていませんか?雇用枠の選び方や支援制度をうまく使えば、自分に合った形で働くことは十分可能です。

友達のユイちゃん、発達障害があって就職どうしたらいいかわからないって悩んでるんだよね。手帳とかも必要なのかな?
この記事では、障害者雇用枠と一般枠の違い、手帳なしで使える支援制度、就労移行支援の活用方法、合理的配慮の申請方法まで、発達障害のある方の就職に必要な情報を横断的に解説します。
発達障害のある方の就職状況
ここでは、発達障害のある方の雇用実態と、就職において重要な前提知識を整理します。
雇用者数は増加傾向にある
厚生労働省の調査によると、発達障害のある方の雇用者数は増加を続けています。5人以上の企業に雇用されている発達障害のある方は約9万1,000人(2023年時点)で、2018年の約3万9,000人から2倍以上に増加しました。就職自体のハードルは以前と比べて着実に下がっています。
また、1年定着率が71.5%と、精神障害・知的障害等の中で最も高い水準にあるという点も特徴的です。自分に合った環境と支援制度を選べば、長く働き続けられる可能性は十分にあります。
発達障害者の就労支援について詳しくは、厚生労働省「発達障害者の就労支援」のページも参考にしてください。
発達障害とは何か|就職と関係する主な特性
発達障害は、脳の発達の違いによって生じる障害の総称で、ASD(自閉スペクトラム症)・ADHD(注意欠如・多動症)・LD(限局性学習症)などが含まれます。複数の障害を同時に持つ「重複」も多く見られます。
就職において関係しやすい特性として、コミュニケーションの困難、業務の優先順位づけの難しさ、感覚過敏、特定の作業への強い集中力などが挙げられます。特性の内容や程度は人によって大きく異なり、「発達障害だから就職できない」という結論は当てはまりません。
発達障害の定義や特性の詳細は、国立障害者リハビリテーションセンター発達障害情報・支援センター「各障害の定義」を参照してください。

ユイちゃんはASDとADHDの両方を持ってるって言ってたけど、そういうパターンも多いんだね。

重複は珍しくないんですよ。大切なのは「どの障害か」より「自分の特性が仕事でどう影響するか」を整理することですね。
障害者雇用枠と一般雇用枠の違いを理解する
以下では、発達障害のある方が就職を考えるうえで必ず確認しておきたい雇用枠の違いを整理します。
障害者雇用枠(オープン就労)の特徴
障害者雇用枠は、障害者手帳を持つ方が対象の採用枠です。企業は法定雇用率(2024年4月時点で2.5%、2026年7月から2.7%へ引き上げ予定)を満たすために障害者を一定数雇用する義務があり、この枠での採用が行われます。
障害者雇用枠の主なメリットは、障害への理解がある環境でスタートできること、業務上の配慮を受けやすいこと、支援機関(ジョブコーチなど)のサポートが得やすいことです。一方で、求人数が一般枠より少なく、給与水準が低めになるケースもあります。
- 障害を開示した上で配慮を受けながら長期的に働きたい
- 特性による困りごとが大きく、サポートなしでの就業が難しい
- 就労移行支援からのステップアップを検討している
- 精神障害者保健福祉手帳または療育手帳を取得済み・取得予定
一般雇用枠(クローズ就労)の特徴
一般雇用枠は、手帳の有無に関わらず応募できる通常の採用枠です。障害を開示せず(クローズ就労)でも応募できるため、選択肢が広く給与水準も高い傾向があります。
ただし、配慮を求めにくい環境になりやすく、特性が把握されないまま困りごとが積み重なるリスクもあります。「手帳はあるが、一般枠で応募してオープンに配慮を求める」という方法もあり、雇用枠と開示の有無は必ずしも連動しません。
| 比較項目 | 障害者雇用枠 | 一般雇用枠 |
|---|---|---|
| 応募条件 | 障害者手帳が必要 | 手帳不要 |
| 求人数 | 少なめ | 多い |
| 給与水準 | やや低め | 幅広い |
| 配慮の受けやすさ | 得やすい | 交渉が必要 |
| 職場の理解 | 高い傾向 | 会社による |
手帳の有無と就職の関係
発達障害のある方が取得できる手帳は主に「精神障害者保健福祉手帳」です。知的障害を伴う場合は「療育手帳」も対象となります。
手帳がなくても就職は可能です。一般雇用枠はもちろん、就労移行支援や発達障害者支援センターなど多くの支援機関は手帳の有無に関わらず利用できます。ただし、障害者雇用枠の求人に応募するには手帳が必要です。自分の特性や状況に応じて、手帳取得を検討するかどうか判断してみましょう。
発達障害の就職で活用できる支援制度
以下では、発達障害のある方が就職に向けて利用できる主な支援機関・制度を紹介します。

ユイちゃん、支援機関って種類が多くてどれを使えばいいかわからないって言ってたんだよね。

「就職まで時間をかけて準備したいか」「今すぐ求人を探したいか」で使う窓口が変わりますよ。整理しますね。
就労移行支援|就職準備に最も適した選択肢
就労移行支援は、障害のある方が一般就労を目指すために通う福祉サービスです。原則2年間利用でき、職業スキルの訓練・履歴書作成・面接練習・就職後のフォローまでサポートしてくれます。手帳がなくても医師の診断書があれば利用できる場合があるため、まず地域の相談支援事業所や市区町村窓口に確認してみましょう。
- 職業スキルの訓練(PCスキル・ビジネスマナーなど)
- 特性の自己理解支援
- 履歴書・職務経歴書の作成サポート
- 面接練習・企業実習の機会
- 就職後の職場定着フォロー(最大6か月)
ハローワークの専門援助窓口
ハローワーク(公共職業安定所)には、発達障害のある方向けの専門援助窓口が設けられており、精神・発達障害者雇用サポーターが配置されています。就職活動の相談から、障害者雇用枠の求人紹介、職場定着支援まで一貫して対応してくれます。
また、障害者トライアル雇用(原則3か月の試行雇用)を活用すれば、企業側も採用のリスクを下げた形でお互いを知ることができます。ハローワーク窓口でトライアル雇用について相談してみましょう。
地域障害者職業センター・JEED
JEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)が運営する地域障害者職業センターでは、職業評価・職業準備支援・ジョブコーチ支援などの専門的なサービスが受けられます。
ジョブコーチ支援は、支援員が実際の職場に出向き、本人と職場の両方にサポートを行う制度です。特性による困りごとが仕事のやり方・環境に起因することが多い発達障害のある方にとって、非常に効果的な支援です。詳細はJEED「障害者の方へ」をご覧ください。
発達障害者支援センター
各都道府県に設置されている発達障害者支援センターは、手帳や診断の有無に関わらず相談できる窓口です。就労に関する相談だけでなく、生活全般の困りごとについても対応しています。
「まず何から始めればいいかわからない」という状態でも気軽に相談できるのが特徴です。全国の支援センター一覧は発達障害ナビポータルから検索できます。
合理的配慮の申請と職場への伝え方
以下では、2024年4月から全事業者に義務化された合理的配慮について解説します。
合理的配慮とは何か
2024年4月の障害者差別解消法改正により、すべての事業者(民間企業を含む)に合理的配慮の提供が義務化されました。これは、障害のある方が職場で働く上での障壁を取り除くために、事業者が過重な負担にならない範囲で必要な措置を講じることを義務づけるものです。
発達障害のある方にとって具体的に考えられる配慮の例としては、以下のようなものがあります。
- 業務指示を口頭だけでなく文書でも伝えてもらう
- 優先順位を明確にした業務リストを共有してもらう
- 騒音の少ない席やパーティションを設置してもらう
- 定期的な面談で困りごとを相談できる機会を設ける
- フレックスタイム制やテレワーク制度の利用
配慮の申請方法と伝え方のポイント
合理的配慮を求める際は、「何に困っているか」と「どのような配慮があれば解決できるか」をセットで伝えることが重要です。「障害があるから配慮してほしい」という漠然とした伝え方より、具体的な困りごとと解決策をセットで提案するほうが、職場側も動きやすくなります。
例えば、「口頭指示だけだと業務内容を記憶しにくい特性があるため、チャットやメモで指示を補完してもらえると助かります」という形です。就労移行支援や支援センターのスタッフに相談し、自分に合った伝え方を一緒に考えるのも有効な方法です。
障害種別でみる就職活動のポイント
発達障害の種別によって仕事上の困りごとや向いている環境が異なります。以下では主な3種類の傾向を整理します。
ASD(自閉スペクトラム症)の場合
ASDのある方は、曖昧な指示やルールに戸惑いやすい一方で、マニュアルが明確な業務や専門的な知識を活かせる仕事では高いパフォーマンスを発揮しやすいという傾向があります。コミュニケーションの齟齬が起きにくい職場環境や、業務範囲が明確な職種が合いやすいでしょう。
就職活動では、事前に業務の流れや職場環境について詳しく確認しておくことが重要です。ASDの就職に関する詳細は、自閉症の就職を成功させる進め方とコツの記事も参考にしてください。
ADHD(注意欠如・多動症)の場合
ADHDのある方は、不注意や衝動性、多動などの特性が仕事上の困りごとにつながりやすい一方、興味のある分野で強い集中力を発揮したり、アイデアを生み出す力を持っていたりすることも多くあります。単調な繰り返し業務より、変化のある仕事や創造性が求められる環境が合いやすい傾向があります。
ADHDのある方の就職活動については、就職支援の使い方から準備の進め方まで詳しくまとめた記事があります。
LD(限局性学習症)の場合
LDのある方は、読み書きや計算など特定の能力に困難がある一方、その他の知的能力は平均的か、それ以上であることも少なくありません。「書類作業が多い仕事は向いていないが、対人コミュニケーションや実作業が得意」というパターンも多くあります。
ICTツールや音声入力など、特性を補う手段を職場に配慮として求めることで、能力を最大限に発揮できる可能性があります。履歴書や書類に関しては支援機関のサポートも有効活用しましょう。
就職活動を進める際の重要ポイント
ここでは、発達障害のある方が就職活動を進める際に意識しておくとよい共通のポイントを解説します。
自己理解を深める|特性の棚卸しをする
就職活動において最初に必要なのは、「自分の特性が仕事の場でどのように現れるか」を整理することです。苦手なことだけでなく、得意なことや、どんな環境・条件があれば力を発揮できるかを言語化しておきましょう。
就労移行支援や支援センターでは、自己理解を深めるためのプログラムが用意されています。一人で抱え込まず、専門家と一緒に取り組むことをおすすめします。
求人票で確認すべきポイント
発達障害のある方が求人票を見るときは、給与や職種だけでなく、職場環境・配慮実績・雇用定着率なども確認することが重要です。
- 業務内容は明確に書かれているか(曖昧な記述は要注意)
- 障害者雇用実績や配慮の実績が示されているか
- テレワーク・フレックスなど柔軟な働き方ができるか
- 定着支援・面談の仕組みが整っているか
気になる点は面接時に積極的に確認しましょう。答えを曖昧にする企業は、配慮への理解が薄い可能性もあります。
ひとりで抱え込まず相談先を持つ
発達障害のある方の就職活動において、「一人でなんとかしようとしない」ことが成功の鍵のひとつです。支援機関・医療機関・家族など、複数の相談先を持ち、困ったときに早めにSOSを出せる環境を整えておきましょう。
また、就職後の職場定着も重要です。困りごとが出てきたときに相談できる人が職場内にいるか、社外の支援とつながり続けられるかを意識しておくと、長期就労につながりやすくなります。
発達障害と働くことに関する幅広い情報は、発達障害の就職・転職情報まとめページもご参考ください。
発達障害の就職に関するよくある質問
ここでは、発達障害のある方やそのご家族からよく寄せられる就職に関する質問にお答えします。
- 発達障害があっても正社員になれますか?
- はい、なれます。発達障害のある方が正社員として雇用されているケースは多くあります。障害者雇用枠・一般雇用枠いずれでも正社員採用は行われています。自分の特性に合った職場と働き方を見つけることが長期就労の鍵です。
- 診断を受けていなくても支援機関を使えますか?
- 多くの支援機関(発達障害者支援センター等)では、診断前でも相談可能です。就労移行支援の利用には原則として障害福祉サービスの支給決定が必要ですが、まずは相談からスタートすることをおすすめします。
- 障害者手帳を取得するメリット・デメリットは何ですか?
- メリットは障害者雇用枠への応募が可能になること、税優遇や各種割引を受けられること、支援サービスへのアクセスが広がることです。デメリットとしては、取得・更新に手続きが必要なことと、開示に対する心理的抵抗を感じる場合があることが挙げられます。
- 就労移行支援にはどれくらいの期間通うのですか?
- 就労移行支援は原則として2年間(24か月)利用できます。多くの事業所では就職まで平均1年前後のケースが多いですが、特性や準備状況によって個人差があります。在籍中の就職活動と並行して通うことも可能です。
- 発達障害の就職でよくある失敗パターンは何ですか?
- 特性の自己開示が遅れてしまい困りごとが蓄積するケース、「なんとかなる」と支援を使わず一人で進めてしまうケース、条件だけで企業を選んで職場環境を確認しないケースが多く見られます。事前の情報収集と支援機関の活用が重要です。
まとめ
発達障害のある方の就職は、雇用枠の選択・支援機関の活用・合理的配慮の申請という3つの柱を理解することから始まります。手帳の有無や障害の種別に関わらず、自分の特性を整理し、それに合った環境を選ぶことが長く働き続けるための土台となります。一人で抱え込まず、就労移行支援・ハローワーク・発達障害者支援センターなど複数の窓口を早めに使ってみましょう。

支援機関への相談が早いほど、準備に使える時間も増えますよ。まずは発達障害者支援センターへ気軽に連絡してみてくださいね。
ワナワーク編集部
ワナワーク編集部は、国家資格キャリアコンサルタント(キャリア相談歴8年)を有する就職・転職支援の専門家チームです。発達障害・精神疾患のある方の「働く」に寄り添い、厚生労働省などの公的機関や医療の一次情報をもとに、信頼できる情報をお届けしています。
本記事は就職・キャリア支援の観点から作成されたものであり、医療的助言ではありません。診断・治療・服薬等については、必ず医療機関や専門家にご相談ください。記事内で紹介する職種・働き方は一般的な傾向に基づくものであり、個人差があります。

